先発投手をやりたくないですか?
入団から2年間、ファームでは先発投手としてマウンドに上がる機会がほとんどだった。その豆田投手が凄く好きだった。
あどけない顔とは裏腹な、えげつないストレート。体全体を使って投げるダイナミックなフォーム。その投げっぷりに魅了された。しかも地元埼玉県出身となれば、応援にも自然と力がはいる。
ただ、今シーズンから中継転向。ファームでは26試合全て中継ぎ登板だった。防御率は2.43。主に先発をやっていた1年目は同9.45、2年目は3.76だったことを考えると、中継ぎの方が向いているのだろうか。
支配下登録の会見で私のジャーナリスト魂が燃え上がり、先発投手をやりたいという拘りはないのかと聞くと、こう返ってきた。
「先発への拘り……なくなったって訳ではないですが。自分自身のチャンスとして中継ぎの方があると思っていたので、今は中継ぎで勝負していきたいというのが一番にあります」
育成契約の焦りを乗り越えて……
育成契約の期間は最長で3年。期間内に支配下登録されないと自由契約になる。再契約されることもあるが、その場合、契約期間は1年だ。
豆田投手もこのルールをもちろん把握していた。
「育成3年目で正直焦りはかなりあって、どうやったら支配下に上がれるかを考えていました」
自分がやりたいポジションはあれど、理想より現実を考え、さらに自分が置かれた状況を踏まえて行動に移した結果、見事に支配下契約を勝ち取ったのだ。
会見で会話を交わすと、豆田投手は思った以上にクレバーで貪欲な選手だと伝わってきた。物事を冷静に考えることができ、同時に熱さもある。
そうなると尚更、一軍で先発のマウンドに上がる豆田泰志が見たくなる。そう思うのは僕だけではないはずだ。
現にライオンズOBでアカデミーコーチの髙橋朋己さんも「豆ちゃんが一軍で活躍してくれるのは嬉しいですが、個人的には先発をやって欲しいんですよね」と熱望する。
ちなみに“豆ちゃん”は豆田投手のニックネームで、髙橋さんだけでなく渡辺久信GMやファンも親しみを込めてそう呼んでいる。みんなに愛されるこの若獅子のプロ初先発を心待ちにしながら、更なる成長を見守っていきたい。
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