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新人合同自主トレでのスタートダッシュの重要性

 次に、指名を受けた選手について。指名を受けたあとは、球団との交渉や挨拶、入団会見、その他もろもろの非日常が続く。つまり、練習時間が思うように確保できなくなるのだ。さらにいうと、どれだけ練習していっても、合同自主トレの最初の1日が終わるととてつもない筋肉痛に襲われることになる。準備を大切にするということを今のうちに見直してみるのもいいかもしれない。

 そして、何においてもそうだが、第一印象というのは大切である。新人合同自主トレが始まったその日、『こいつ、できる』と思わせるだけで、かなりのアドバンテージを得られる。逆を言えば、スタートダッシュに出遅れた選手は、挽回していくためにはなかなか厳しい道のりが待っている。何を隠そう私がそうだったので、来季の新人選手はぜひ良いスタートを切って欲しいと願う。

新人合同自主トレでの集合写真 ©寺田光輝

 そしてこれはドラフト指名後の補足的な話であり、賛否両論があることを承知の上で話すが、何でもいいから一発ギャグを持っておくと良いかもしれない。『野球と関係ないじゃないか』と言われそうなものだが、何の世界でも、求められる仕事だけできれば良いというわけではなく、人と人とのコミュニケーションがあって得られるものは大きい。野球界ではとりわけ、一発ギャグがそのきっかけとなり得るので、ぜひ修得をお勧めする。

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 ちなみに私はキャンプ初日、B’zさんのモノマネをしながら童謡のゾウさんを歌い、大滑りしてしまった。その日の練習はどこかふわふわして心ここに在らずだったように思う。しかし、その度胸をかってくれた梶谷選手がその晩夕食にさそってくれて、そこから今に至るまでよくしてもらっている。完璧な一発ギャグなど必要ない。自分の中で、自信を持って披露できる何かを身につけておくといいのかもしれない。

体重=パフォーマンスの向上ではない

 そしてここからは栄養の話である。元プロ野球選手現医学部学生という立場からみた、自分が現役の時これ知ってたらなあという経験をもとにおススメするサプリの話をさせていただく。

 まず、大前提としてバランスの良い食事をとること。これはもはや説明の必要もないことではあるが、食事で足りない分を補うのがサプリやプロテインなので、まずは食事を大切にしてほしい。

 そして、体重=パフォーマンスの向上ではない。筋肉量の増加がそれをもたらすというデータがある。それを前提に話すと、大切なのはBCAAとプロテインとなる。特にBCAA。これは必須アミノ酸のうち、バリン、ロイシン、イソロイシンというアミノ酸であり、このうちのロイシンの血中濃度が筋量と密接な関係を持つ。厳密には少し違うが大まかにいうと、ロイシンの血中濃度が高いと、身体の中にある酵素(筋肉を作る大工さんみたいなもの)が元気になり、トレーニングや練習後の回復、筋力アップに良い効果をもたらす。さらに、エネルギー源として筋肉が分解されることを防ぐ役割もある。諸説あるが、BCAAを体に循環させておくことで、長期的にはかなりの差になると考えられる。その上で、プロテインを補給していくことで、効率良くトレーニング効果があげられるようになる。

 ということを当時の私は全く知らなかったし、BCAAを飲んだ記憶がほとんどないので、この記事を読んで興味が湧いた方はぜひ詳しく調べてみて欲しい。さらに補足すると、クレアチンとかビタミンとかそういう話になってくるので、またそれは何かの機会で。

 最後に、これは私がしくじらなかったこと。それは後悔のない選択ができたということ。よく聞かれるのが『何を考えて生きているのですか?』ということだが、答えはたった一つ、後悔の少ない選択をしようということである。10年後、20年後の自分が今の自分を見た時、選ぶべき選択肢はすぐわかるんじゃないかと、そんなことを思いながら様々な選択をしている。穏やかであり寂しくもある秋の今日、この記事を書いている午後3時。暖かい日差しはあるものの、気温は少し低い。今から洗濯をすべきかどうか、10年後の自分に聞いてみようと思う。

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