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「まさに生き地獄」――55歳の春を迎えることなく命を絶った財務省職員の苦悩【森友スクープ全文公開#2】

「内閣が吹っ飛ぶようなこと」

 俊夫さんは国有地の売買には関与していないから背任は関係ない。だが証拠隠滅は? この頃はまだ公文書の改ざんは明らかになっていなかったが、心ならずも改ざんをさせられることになった俊夫さんは、自分も罪に問われることを恐れていた。ことあるごとに「大変なことをさせられた」「内閣が吹っ飛ぶようなことを命じられた」「最後は下っ端が責任を取らされる」「ぼくは検察に狙われている」とおびえていたことを、昌子さんはよく覚えている。

「手記」以外に直筆のメモも

 その検察による最初の接触は11月17日に訪れた。職場を通しての事情聴取の要請だ。事情聴取は、容疑者扱いの取り調べとは違うのだが、不正な改ざんに関わった自覚のある俊夫さんには同じように感じられただろう。昌子さんは当時の様子について「震え上がっていました。怖くて怖くてしょうがない感じでした」と話している。

 そして12月25日、俊夫さんは震える小声で昌子さんに告げた。

「ドクターストップがかかってるのに、電話が来た」

「きょう、とうとう電話あったわ。医師は止めていたはずなのに。こんな辛いのに、ドクターストップがかかってるのに、電話が来た」

 この日のメモ帳には「久保田検事より受電」とある。

 実はそれに先だって検事が俊夫さんの主治医に事情聴取が可能か尋ねていたことが、主治医の話でわかった。主治医は「病状が悪化する」と聴取を止めた上で「手紙かメールでごあいさつ程度に様子をうかがったらどうですか?」と話した。だが検事はすぐに俊夫さんの携帯に電話をかけて20分間も話したのだという。20分は挨拶のレベルを超えている。事実上の聴取と言われても仕方ないだろう。

安倍夫妻 ©JMPA

 これをきっかけに俊夫さんの病状は極端に悪化した。

「ぼくは職場に復帰したら検察に呼ばれる。検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。検察はもう近畿財務局が主導して改ざんしたという絵を描いている。そのストーリーから逃げられない。ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」

 妄想も現れるようになった。「玄関の外に検察がおる!」と繰り返し叫んでいたという。

 昌子さんも辛かった。

「壊れたみたいにずっと同じことを繰り返しているんです。職場に復帰しないとお金がない。でも復帰したら検察に呼ばれる。その板挟みが本当に辛かったんだと思います」

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