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はびこる「PCR検査拡大は不合理」説を公衆衛生の第一人者が論破!【偽陽性の問題はほぼ100%ない】

PCR検査の徹底的拡大こそ「経済を回す」

 レポートでは3つの場合分けがなされ、

「1. 事前確率が比較的高い場合:クラスター対策などの積極的疫学調査や個別感染症診療 、2. 事前確率は低いが(または不明だが)、集団リスク(公共的影響)や経済的影響が大きい場合:空港検疫、院内感染対策、高齢者・福祉施設の施設内感染対策、3. 無症状患者で、事前確率は低いが社会・経済的な影響が大きい場合:海外交流、音楽・スポーツイベント、観光、特定のハイリスク職業のヘルスケア。1、2は、行政検査のPCR検査の実施、3は企業・自己負担で実施が望ましい」

 といずれにおいても、検査の重要性を指摘している。

 さらに、「これらの目的と意義を考えると、継続的な精度の確保と維持のもとに、事前確率(感染がどのくらい広がっているかどうか)によらずにPCRの利用を拡大することが必要である」と結論づけている。

防護服も不足している ※写真はイメージ ©iStock.com

感度・特異度の議論はもうやめよう

 検査拡大へ反対する立場から、厚生労働省や医療関係者の間で指摘されているのが、「PCR検査を拡大すると偽陽性が多くなる」、つまり、感染していないのに感染していると診断される人が多数出ることに対する懸念だ。

 特に、検査の特異度(陰性の人を陰性と判定できる確率)が100%でないために、感染確率が低い時には、検査で陽性の結果が出ても、実際に感染者である確率(陽性予測値)が低くなる。

 ゆえに、「数少ない陽性者を見つけ出すために、それに見合わない多くの方々に必要のない隔離生活を強いるのは不合理である」「感染の確率が低い場合には(つまり症状のない場合には)検査はやるべきではない」「症状があり、感染の確率が高い人へ検査をすれば十分」という理由で、検査を症状のある症例に絞ったクラスター対策が続けられてきている。

 しかし、現在のクラスター対策では、無症状感染者を中心とする感染拡大を止めるのは難しい。それでは、休業・自粛要請という手法に安易に頼らざるをえなくなってしまう。

 上記の反対論の方々の指摘には2点大きな問題があると考えられる。まず、PCR検査の特異度については、様々な精度管理により、特異度はほぼ100%だ。PCRはウイルスの遺伝子そのものを見ているために、実際の特異度は99.99%以上と報告されているが、検査拡大に反対する厚労省や医療機関の関係者の方々はなぜか99%ジャストの値を用いて議論されている。

集中治療中の患者が並ぶ衝撃的な光景。2020年3月23日、イタリアのミラノの南東・クレモナにあるクレモナ病院の集中治療室で、コロナウイルスウイルスに感染した最も深刻な患者たちと治療する医療者 ©時事通信社

“わずか1%の差”と思われるかもしれないが、このわずかな差により、2つ目の論点である感染確率が低い場合には、「数少ない陽性者を見つけ出すために、それに見合わない多くの方々に必要のない隔離生活を強いるのは不合理である」というロジックが成立しなくなるからだ。

 日本医師会COVID-19有識者会議の中間報告書解説版では、「PCR検査の特異度を99.99%に向上させた場合は、有病率が必ずしも高くない(0.5-10%)疫学的調査においても、偽陽性が増えて陽性的中率が大きく低下することはない」と示されており、精度管理を徹底すれば、偽陽性の問題はほぼ存在しないのだ。

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