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雨宮塔子「息子はフランスの高校1年生、生活指導の面談で感じたこと」

「文藝春秋」6月号「巻頭随筆」より

もしこれが日本だったら?

 私はジェンダー・ギャップ指数、16位のフランスに住んでいる。今回の面談時だけでなく、働く女性や離婚したシングルマザーへのスマートな対応によく救われている。息子の生活指導の先生がたまたま同じような境遇にいるとか、あるいは女性だったからではなく、他の先生や男性教師でも、おおむね似通った対応を受けられたことと思う。

 が、もしこれが日本だったら? 1カ月も離れるのは無責任だと批判されるか、あるいは、こういう母親だから息子の躾もなっていないのだと言われるだろうか?

 フランスを一度離れてみて見えてきたことがある。人はみな一人ひとり、考え方も生き方も異なって当たり前で、その他者を尊重する姿勢がここフランスでは人々に刷り込まれているということだ。多様性を受け容れる、というと安易に聞こえるかもしれないが、環境も背景も民族すら異なった人たちが自分の信じたことや進みたい方向、権利といったものを得るためには時には闘いも辞さない覚悟がそれぞれにあって、裏返して言えば、そういう他者からたとえ自分に迷惑が降りかかったとしても尊重しようという寛容さにも通じている。

写真はイメージ ©iStock.com

 森喜朗元会長の発言が話題になって久しい。男女格差是正の政策がここ10年で急速に整備されたフランスでも、それは表面上だけという声もある。たしかに性差別反対の立場を取りながら、例えば遠回しに、または象徴などを用いて性差別的な発言をする人はいるし、セクハラや女性への暴力の問題はますます深刻になっている。

 が、つくづく“平等”であることへの意識の高さに驚かされるのも事実だ。

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