被疑者死亡で不起訴——。2009年10月26日に発生した「島根女子大生殺人事件」は、7年後、不透明な結末を迎え、真相究明は叶わなかった。なぜ警察の捜査は難航したのか。犯人が死亡した背景には何があったのか。事件発生時から現地取材をつづけるノンフィクションライターの小野一光氏が検証する。
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「島根女子大生殺人事件」を検証する
事件当日、島根県立大学1年生の平岡都さん(当時19)の姿は、アルバイト先であるショッピングセンター内のアイスクリーム店にあった。営業を終了した午後9時過ぎの店内には、都さんと、同じ大学に通うA子さんの姿があった。
「都さん先に上がっていいよ」
「あっ、ほんと? ありがとう」
私服に着替え、帰り支度をする都さん。
「(店の)ゴミだけ持っていってね」
「わかったあ」とゴミ袋をもち、都さんは「おつかれ~」と元気のある声で店を後にした。
午後9時15分、同センターの通用口にある防犯カメラには、ボーダーのワンピースに、黒いレギンスを穿いた彼女の姿が映っている。その後、消息を絶ってしまったのだ。
A子さんは、事件の1年後、2010年10月に私の取材に対し、次のように答えている。
「その日は、とくに誰かと待ち合わせをしているという様子ではありませんでしたし、そういう話も聞いていません。いつもと変わらない、ごく普通の様子でした。だから私も特に気に留めることはなかった。後から行方不明になったと聞いて、すごく驚きました」
事件の数日前、A子さんは彼女に交際相手についてたずねていた。
「都さんは『いないよ』と答え、『県大、いい男いないねえ』と言って、笑い合いました。彼女は勉強熱心で、バイトの休み時間には英語の本を読んでいたりしていました」
都さんと連絡がとれないことを不審に感じた母親が、彼女の住む女子寮に連絡を入れたことで、行方不明の事実が判明。28日に島根県警浜田署に捜索願を提出した。だが有力な手がかりはなく、11月2日からは公開捜査に切り替えられた。
そして11月6日の昼過ぎ、浜田市街から約25キロメートル離れた、広島県北広島町の臥龍山の崖下で、キノコ狩りに訪れていた男性が、切断された都さんの頭部を発見する。
遺体発見現場
顔面に激しく殴打された痕
島根・広島両県警の合同捜査本部による大規模な捜索で、臥龍山で大腿骨と四肢が切断された胴体、左足首が発見された。さらに19日には野生動物の糞や付近から、右足の親指の爪1点と、爪と見られる破片4点、約1.5センチメートル大の肉と骨片が見つかった。
広島県警担当記者は説明する。
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