日産「疑惑の社長」で挑む日仏総力戦

ルノーとの新たな交渉。主導権を握るのはどっちだ

井上 久男 経済ジャーナリスト
ビジネス 企業
カルロス・ゴーン氏 ©文藝春秋

 それは日産社員にとって目を疑う出来事だった。

 第120回定時株主総会を終えた後の6月25日夕刻。横浜の日産本社を後にしたルノーのジャンドミニク・スナール会長とティエリー・ボロレCEOの2人が乗り込んだ車が、いずれもトヨタの高級ミニバン「アルファード」のハイヤーだったのだ。

 今回、来日した両氏に配慮して日産は移動用に車を手配していた。もちろん日産車だ。しかし、2人のルノーVIPはその車をあえて使わず、ハイヤーを選んだという。この光景を目にした日産幹部は、「アライアンス(同盟)と言いながら、日産車に対する抵抗があるのだろう。ルノーは信用ならない!」と激怒して語った。

 いまの日産とルノーの関係を象徴するような出来事だ。

 1999年に資本提携して以来、両社の関係はアライアンスと位置付けられてきた。ルノーは日産の株式43.4%を、日産はルノーの株式15%を持つ。従って資本の論理ではルノーが日産の経営を支配できる。しかし両社は支配・被支配の関係ではなく、互いの自主性、独立性を尊重することをモットーとし、技術や商品を相互補完する体制を構築してきた。両社の提携が20年間も続いてきた大きな理由だ。

 例えば、ダイムラーとクライスラーが経営統合しても「離婚」したように、自動車産業で資本提携が成功したケースはあまり多くない。開発哲学の違いや、対等合併と言いながらも、力関係で強い方が弱い方を強引に支配しようとするからだ。

 しかし、これまで信頼関係を構築してきた日産とルノーの間に、大きな亀裂が入ってしまった。

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source : 文藝春秋 2019年8月号

genre : ビジネス 企業