「鬼滅の刃」作曲者と世界の片隅の存在を描いてきた作家が創作の孤独と喜びを語る
小川 お会いするのは2回目ですね。8月にNHK大阪ホールで行われた梶浦さんのライブにご招待いただき、楽屋でご挨拶もさせていただきました。
梶浦 その節は本当にありがとうございました。私は昔から小川さんの大大大ファンなので、あの日は「このお客さんの中に小川先生がいらっしゃるんだ……!」と思って、珍しく緊張してしまいました。
作詞家・作曲家・音楽プロデューサーとして活躍する梶浦由記氏は、今年デビュー30周年を迎えた。『魔法少女まどか☆マギカ』や『鬼滅の刃』などアニメ作品の音楽を数多く手がけてきた。
1991年に「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞した小川洋子氏は、今年で作家デビュー35周年を迎える。
梶浦氏が小川作品の大ファンであることから実現した対談では、それぞれの創作への思いが語られた。
小川 あの日のライブ会場には約1300人の方がいらしていたそうで、すごい熱気でした。作家はあれだけの人数の方と同じ空間で作品を共有したり、皆で「うぉー!」って盛り上がったりする機会がまずないので、羨ましいなあと思いながら見ていました。でも梶浦さんがMCで「音楽は一対一なんですよ」と言っていたのが非常に印象に残っています。1300人と共有しているわけではなくて、音楽とそれを聴いている1人との対話が1300個ある、ということなんですね。
梶浦 覚えていてくださって嬉しいです。作品を創作する時もそうですが、はじめから大勢の人と共有しようとすると、結果的に誰にも届かない気がするんです。「自分の心が動くもの」を「誰か一人だけに絶対に届ける」という気持ちでやらないと軸がブレてしまう。
小川 音楽も小説も、誰にでも分かりやすいメッセージを持ったものがすなわちいい作品というわけではないですよね。究極的には、どこかの誰か一人にとって、一生の一曲、一生の一冊になってくれれば、作った意味がある。そう自分を励ましながら書いています。
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source : 文藝春秋 2023年12月号