“時代を作った人たち”の本音に迫る対談企画「有働由美子のマイフェアパーソン」。今回のゲストは、シンガー・ソングライターの泉谷しげるさんです。
■連載「有働由美子のマイフェアパーソン」
第70回 山崎貴(映画監督)
第71回 山極壽一(総合地球環境学研究所 所長)
第72回 増田惠子(歌手)
第73回 草野仁(TVキャスター)
第74回 増田明美(スポーツジャーナリスト)
第75回 今回はこちら
泉谷 コーヒー、俺はいいから有働さんだけ飲んでよ。俺は飲み過ぎちゃうとトイレが近くなるから。
有働 私も同じですよ。尿漏れ改善薬のCMに出ているのは、トイレが近いからという訳ではないのですが(笑)。
泉谷 有働さんは尿漏れしなさそうだけどな。
有働 はい、今はまだ。
泉谷 俺はしますよ。5月には77歳だし。でも考えてみれば、昔から尿漏れしているな。
有働 ライブ中にですか?
泉谷 そうですよ。他によく出るのは目やにで、よだれや鼻水も。お客さんの方が気遣ってくれて、出ていると指さされるんだ。でも全力でやるからには、そういうことも覚悟しないと無理ですよ。
有働 それほどの全力をライブのたびに出していたら疲れませんか?
泉谷 体は疲れても心は疲れないんですよ。心の疲れは寝ても治らないけど、体は寝れば治るじゃないですか。漏らすとか体面を気にすることを超えるくらい、全身全霊かけてやると気持ちいいですよ。
有働 冷静な自分を多少は残しておこうとか計算もしませんか。
泉谷 それをするのは芸事の範疇です。自分が目指すのは、自分を使い切って人生ギリギリのところまで行くこと。これがクラシック音楽だと行きっぱなしというわけにいかなくて、自分の技術はどうだったかと反芻しなきゃいけない。俺は行きっぱなしで、反省する気もない。
有働 ライブに足を運ぶお客さんも、それを見にやってくるのでしょうね。

泉谷 そう。ライブはエンターテインメントなんです。音楽の技術を見せたいわけじゃなくて、生き方を見せる。お客さんが俺の歌に影響されて「大変な時に励まされた」なんて言われた日には、客も人生を持ってきているなと責任を感じますよ。とはいえ、いちいち構っていられないから「勝手に見てろ!」と。
有働 え〜。お客さんの人生への責任は感じつつですか。
泉谷 それは俺が勝手に感じるだけの話で、お客さんの前で説教臭く言ったことはないですね。人生の重みを聞いてそれに応えるのではなく、別の力で忘れさせてあげる、楽しんでもらうということなのかな。
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