2000年以上続いた固定観念を覆す
《僕は突き止めた。シジュウカラの鳴き声の一つひとつには意味があり、かれらはそれらの鳴き声を組み合わせて文を作ることまでできるのだ》
行間からシジュウカラ愛が溢れ出しているこのエッセイ。著者は世界初の「動物言語学」研究室を立ち上げた鈴木俊貴さん。本年12月には、英・動物行動研究協会の国際賞を日本人、アジア人で初めて受賞される予定です。
「動物は言葉を持たない」、アリストテレスの時代から2000年以上にわたって信じられてきた固定観念が、著者の研究によって覆されていきます。
シジュウカラは20以上の鳴き声を組み合わせて文を作る。しかも他の鳥たちの言語も学習し、暮らしに役立てていると著者は書く。《バイリンガルどころではない。“鳥リンガル”だ》。
シジュウカラの「ヂヂヂヂ」、コガラの「ディーディー」、ヤマガラの「ニーニー」、これはどれも仲間を呼ぶ声で、カラ類はこれを認識し合っているそう。あるいはシジュウカラは「ヒヒヒ」の鳴き声でタカなどの襲来を告げるが、時には餌場から大きいカラ類を追い払うときにもわざとこの声で鳴いたりするんだとか。へえ!
人間で言うところの二語文、ふたつの鳴き声の組み合わせで伝えている内容を解き明かしていくくだりなどは、まるっきり新しいタイプの推理小説を読んでいるような気にもなってきます。この証明のための実験、データ収集に費やす膨大な時間に圧倒されます。

そんな密度の濃い本なのですが、自身によるほのぼのした挿絵がふんだんにあり、小学生でも理解できるような平易な文章で書かれているということが本書の最大の特徴と言えましょう。
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