著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、姫野カオルコさん(作家)です。
家の人は二人とも、各々の流儀(?)で怖かった。今回、私の担当は、家の人のうち、女性のほうなので、彼女のごく一例を話す。
小学五年の私に、彼女は言った。
「うへへへ、あんた、小児乳癌やわ〜。まちがいない。小児乳癌、うへへへ」
平素はめったに笑わぬ人であるのに、上半身を踊るようにゆらし、笑う。
若い世代はどうなのかわからないが、私の世代では、親や先生はじめ大人の言うことは「絶対」だという感覚を持つ者が多かった。少なくとも私はそうだった。
なぜ自分の子を小児乳癌だと、医師でもない地方公務員の彼女が判定したのか不明だが、「絶対」である親が病名を告げたのだから、小学生は怖くてならなかった。しかも、それが慶事であるかのような笑い声も怖かった。
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source : 文藝春秋 2025年4月号