著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、西條奈加さん(作家)です。
母の生態は、未だによくわからない。
性格も言動も承知してはいるのだが、親子においても、いや、親子だからこそ、性格の不一致は往々にして起こり得る。
断っておくと、決して仲が悪いわけではない。ふつうによく話すし、穏やかな親子関係と言えるのだが、夫婦の問題でよくある「価値観の相違」というやつだ。

娘に対して母なりの気遣いはしてくれるのだが、そのポイントが激しくずれている。足を骨折しているのに、顔の擦り傷ばかり大騒ぎする――。たとえて言えばそんな感じだ。この感覚の食い違いというものは、如何ともし難い。
子供の頃の思い出で、強烈に覚えているのが、松谷みよ子さんの童話である。松谷さんの作品は、幼い頃から大好きなのだが、中には怖い物語もある。肝心の作品タイトルは忘れてしまったが、『かきのはっぱのてがみ』という短編作品集の中の一編が、子供心にものすごく怖くて、それを母に訴えた。
物語にざっと目を通して、母は言った。
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source : 文藝春秋 2025年5月号