親に見送られて寝ぼけ眼の小学生がバスで通学する――。そんな幸せな日常の一コマは刺身包丁を手にした黒ずくめの男によって一転、修羅場と化した。なぜ彼は名門校の小学生に憎悪の炎を燃やしたのか。その理由は彼が生まれ育った家庭にあった。総力取材で迫る。
◆ ◆ ◆
「ぶっ殺してやる」
5月28日午前7時40分過ぎ。神奈川県川崎市にある登戸駅前のコンビニから姿を現した男はそう叫びながら、両手に刃物を持ち、スクールバスを待つ小学生たちに次々と襲い掛かった。
小学生の女児1名と保護者1名の命を奪い、17人に重軽傷を負わせた惨劇。そこは血の匂いがただよう阿鼻叫喚の現場と化していた――。
登戸駅の警備員が話す。
「『小学生の女の子が改札前で血だらけになっている』と連絡があり、駆け付けました。小学1年生の女児で、グレーの夏用の制服が真っ赤に染まるほどの血が流れて、改札前にうずくまっていました。首の右側から出血していたので、止血措置を施しました。傷の深さは1センチほどで、その女の子は『切られた。私よりも酷い(被害を受けた)人がいる』と話していました」
惨状を目の当たりにした介護職員が語る。
「女性のギャーッという声が聞こえて、外に出てみると10人くらいの小学生がぐったりと荷物を背負ったまま座り込んでいました。口々に『助けて』と泣いたり、『お父さん、お母さんどうしたらいいの?』と混乱している様子で、私も『救急車がすぐに来るから、大丈夫だよ』と声を掛けて回りました。その中の一人は首から血を流し、仰向けに倒れており、話もできない状態でした。怖くて声を掛けるのも躊躇(ためら)われました」
現場のコンビニ前には、背中を刺されたワイシャツ姿の男性がぐったりと横たわっていた。
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source : 週刊文春 2019年6月6日号