44年間育てた我が子を数十回も刺し続けた時、父の胸に去来したのは恐怖か、悔恨か、それとも、4日前に起きた惨劇の二の舞を防いだ安堵だったか。その時、母は何を思ったか――。“華麗なる一族”の長男が率いた一家が血の海に呑まれるまでを総力取材で描く。
◆◆◆
農林水産省の元事務次官・熊沢英昭(76)の実妹は、みずからを納得させるように頷き、固く唇を噛んだ。
「兄は武士ですよ。追い詰められて、誰かに危害を加えてはいけないから最後は親の責任で(長男の殺害を)決めたのでしょう。それは親にしかできないことです」
そして兄の苦悩の日々をこう代弁するのだ。
「私たち兄妹の仲は本当に良くて、お母さんと英一郎くんがうまくいっていないのは知っていました。でも、兄は私たちに詳しい話はしませんでした。兄はお母さんと英一郎くんの仲を取り持とうと、一番近くで頑張っていたんです。『母と一緒に暮らすとうまくいかない』といって、実家を離れさせていても、兄は英一郎くんと食事に出かけたり、電話をしたり、本当に気にかけていた。それが、先日の川崎の事件をみて、結局こういうことになってしまった。本当に武士ですよね……」
“修羅の家”で一体何が起きていたのか――。
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source : 週刊文春 2019年6月13日号