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ジャニーズ「新しい地図」イジメ “主犯”は嵐の元マネージャーだった

「週刊文春」編集部
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昨年から調査していた公取委
昨年から調査していた公取委

「ついにパンドラの箱が開いた」――。大手芸能プロ幹部はそう呟いた。公正取引委員会によるジャニーズ事務所への「注意」。巨大アイドル帝国による元SMAPメンバー3人に対する“イジメ”は極めて陰湿なものだった。嵐の元マネージャーによる驚きの手口とは。

◆ ◆ ◆

 本誌は先週号で、公正取引委員会によるジャニーズ事務所への調査を報じた。その発売前日の7月17日、独占禁止法違反の恐れがあるとして、公取委が同事務所に注意していたことが明らかとなった。

「問題となったのはSMAP解散後、2017年9月にジャニーズ事務所を退所した稲垣吾郎(45)、草彅剛(45)、香取慎吾(42)の3人を巡るジャニーズのテレビ局への圧力です。公取委は3人の独立後に出演番組が次々に終了した経緯を調査。昨年頃からテレビ局をはじめ、関係各所にヒアリングを行なっていました」(社会部記者)

 芸能人の契約問題に詳しい中村総合法律事務所の中村剛弁護士が言う。

「公取委の『注意』は排除措置命令や警告よりも低い措置で、現時点でただちに違反行為が認められたわけではありません。ただし何も問題がなければ注意を受けることはなく、今回のケースでは将来的に違反につながるおそれがあるため未然防止の意味での措置だった可能性が高い」

 NHKを皮切りにほとんどの民放各局も報道した。

「『ニュースウオッチ9』(NHK)では、草彅が過去に発言した『よくわからない大人の事情があるのか、みんなが望む場所に到達できない』というコメントを引用し、3人の出演番組が打ち切られた経緯や、民放にレギュラー番組を持てていない現状、さらに公取委が昨年2月に公表した芸能人に関する調査報告書などについて詳しく解説していました」(スポーツ紙記者)

フジとテレ朝は“忖度”

民法地上波のレギュラーはゼロ
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 ジャニーズは本誌先週号の取材に対し、代理人弁護士を通じて「ご指摘の事実はございません」と回答。「注意」の事実を伏せていた。

「注意に公表義務はなく、本来なら表に出るはずのない調査結果が報道されたことにジャニーズ側は面食らっていました。スポーツ紙などに記事にしないよう働きかけていたが、さすがに通信社や一般紙の掲載を止めることができず、『違反はしていない』ことを強調することに方針転換。騒動の早期終息を図ったのです」(同前)

 テレビ局によってはニュースの扱い方に大きな差があった。この期に及んでも“忖度”の姿勢を崩さなかったのが、かねてから“圧力”を受けていたフジテレビとテレビ朝日だった。

 フジの情報番組関係者が言う。

「実は編成部から解説やコメントを控えるように通達があり、その後も『ひと番組につき、取り上げるのは一度きり、コメントなし』という条件が課せられたのです。実際、『とくダネ!』では、ジャニーズの幹部と親密な小倉智昭キャスターはひと言もコメントしませんでした」

 驚くべきことに「報道ステーション」(テレ朝系)は、17日以降、一度もこの問題を取り上げていない。

「19日の『ミュージックステーション』で、ジャニー喜多川社長の追悼特集が放送されました。局内ではこれが公取委の注意を報じなかった原因だと見られているが、実はそうではない。テレ朝もフジと同様、公取委の調査の対象だったのです」(テレ朝関係者)

民放地上波からレギュラー番組が消滅

一度も報じない「報ステ」(18日放送分より)
「Mステ」はジャニー氏追悼の90分SP(19日放送分より)

 元SMAPの3人がジャニーズ事務所を退所したのは17年9月8日のことだった。同月22日に3人は元マネージャーの飯島三智氏が代表を務める「CULEN」に所属し、公式ファンサイト「新しい地図」を立ち上げた。

 香取が司会を務め、16年続いた「SmaSTATION!!」(テレ朝系)が最終回を迎えたのは翌23日のことだった。

「香取やCULENは直前まで番組終了を知らされていなかった。ショックを受けた香取は生放送中に『新聞で知った』と嘆き、放送が699回まで続いたことから『あと1回やりたかった』と悔しさをにじませていた。ところが、後の会見でテレ朝の早河洋会長は番組終了を『個人に通知することはない』と突き放し、終了した理由は『総合的判断』と述べるにとどまったのです」(同前)

 さらに18年3月には香取がレギュラー出演していた「おじゃMAP!!」(フジ系)と草彅がMCを務めた「『ぷっ』すま」(テレ朝系)が終了。今年3月には稲垣の「ゴロウ・デラックス」(TBS系)も最終回を迎え、ついに民放の地上波から3人のレギュラー番組が消滅した。

 ジャニーズから各局に、3人の番組を終わらせるような申し入れはなかったのか。ジャニーズ事務所の幹部は、テレビ局の忖度について、こう話していた。

「こちらからは何も言いません。しかし、もちろん配慮してくださることには感謝しますよ。気を遣ってくれるなら、それは何かの形で返すのが当然。要するに、阿吽(あうん)の呼吸じゃないですか」

 フジの編成関係者が語る。

「たしかにSMAP解散直後は、ジャニーズから露骨な圧力や要求はありませんでした。独立後も『おじゃMAP!!』がしばらく続けられたのはそのためですが、ある時期を境にジャニーズの意向を受けた上層部から現場にNGが出るようになったのです」

 きっかけとなったのは17年11月2日から3日間にわたり、インターネットテレビ「AbemaTV」で放送された「72時間ホンネテレビ」だったという。

「サイバーエージェントとテレビ朝日が共同出資するAbemaTVの特別企画。『新しい地図』で再スタートした3人を応援するために元SMAPの森且行や爆笑問題、市川海老蔵らも駆けつけた。視聴数は開局以来最高の7200万回を記録し、民放の情報番組でも大きな話題として取り上げられたのです」(別のテレ朝関係者)

 制作はサイバーエージェントの藤田晋社長が中心となり極秘裏に進められ、早河会長にも当日まで内容は伏せられていたという。

「退所からわずか2カ月であれだけ大がかりな番組を作れるはずがなく、ジャニーズは『新しい地図』サイドが独立前から飯島氏と連絡を取り合っていたことを疑うようになり、態度を硬化させていった」(同前)

ジュリー氏の右腕が詰め寄る

退所が囁かれる中居

「72時間」放送の約3週間後の11月26日、香取はフジの「ボクらの時代」に出演。すると番組の関係者はジャニーズ事務所のAという男性社員に「フジテレビさんはそういう考えなのですね」と詰め寄られたという。

「かつて嵐のチーフマネージャーだったAは、主にテレビ局との交渉やキャスティングを担当しています。ジュリー氏の右腕的存在で、彼を通さなければ出演交渉もできず、陰で『ジャニーズの門番』と呼ばれている。Aは各局の編成担当と定期的に会議を行い、『この企画はうちに何の得があるんですか』、『その話は飲むけど、こうして使ってもらえないと』などとキャスティングや企画内容にも当然のように口を出している」(民放幹部)

 ある局の幹部は、A氏から元SMAPの3人を取り上げた番組や尺の長さをリストにしたものを提示され、「なぜこうなったのですか?」と追及されたこともあったという。

「新しい地図の3人を起用すれば担当者は『どっちなんですか?』と問われる。フジの『おじゃMAP!!』が継続している間も担当者はAから『いつまで続けるつもり?』と詰め寄られたそうです。決して『終わらせろ』とは言わないし、リストも見せるだけで持ち帰り、証拠を残さない」(同前)

 A氏からジャニーズの意向を突きつけられたテレビ局は次第に3人を画面から排除するようになっていく。フジやテレ朝以外にもその意向は浸透し、情報番組にも影響が出ている。

 その最たる例が17年11月23日の「スッキリ」(日テレ系)だ。

男気を見せた加藤と山ちゃん

A氏は「嵐」の元チーフマネージャー

「『GQ MEN OF THE YEAR 2017』というイベントは、新しい地図の3人が出演していたため、当初、日テレの編成はイベント自体を取り上げることに難色を示していた。ところがそれを知った司会の加藤浩次が『うちは忖度する番組じゃない』と主張したため、オンエアに踏み切った。しかし、3人が映っている部分を編集でカットしていたのです」(番組関係者)

 この仕打ちに激怒したのはナレーションを担当する南海キャンディーズの山里亮太だ。

「打ち合わせの席で『一体どういうことですか?』と声を荒げ、画面に映っていない3人の名前を読み上げたのです。スタジオは大パニックでした」(同前)

 同イベントで3人の存在を“黙殺”したのはフジの「めざましテレビ」だった。

「その後も、パラリンピックのイベントを取り上げる際に、スペシャルサポーターの3人の存在を無かったことにして放送するなど、元SMAPを画面から徹底して“排除”した」(前出・民放幹部)

 こうした異常事態に気づいた3人のファンや視聴者から情報が続々と寄せられたことも公取委が調査をはじめるきっかけのひとつになったという。

 前出・中村弁護士が言う。

「具体的な内容や度合いの強弱にもよるが、忖度を仕向ける行為が強ければ『出演させるな』と言うのと同じように判断されることもある。メールなどの証拠が残っていれば、独占禁止法に違反することも十分にありえます」

A氏を直撃すると……

 電話でA氏を直撃した。

――各局の編成会議に出席してキャスティングに意見を申しいれている?

「会社に質問状なりをいただければと思いますが」

――テレビ局に圧力をかけているのはAさんでは。

「なるほど。色んな考えもあるでしょうから、会社のほうにお願いしてもよろしいですか」

 改めてジャニーズ事務所に問うと「弊社従業員が、ご指摘のような行為を行なった事実はございません」。

 各テレビ局にも圧力や忖度の実態を尋ねたが、「事務所から圧力があった事実はございません」(フジ)、「番組制作の過程についてはお答えしておりません」(日テレ)、「そのような事実はありません」(テレ朝)と、それぞれ答えた。

「新しい地図」の3人が所属するCULENにも圧力の実態について尋ねたが、「公正取引委員会の調査に関しては、当社は第三者ですので回答は差し控えさせていただきます」と答えるのみだった。

 元KAT-TUNの赤西仁は自身のツイッターでこう呟いた。

〈こうゆうのが蔓延(はびこ)ってるから日本のエンタメがどんどんつまらなくなっていくの。(中略)“圧力をかけている”という風に見えないように忖度を自主的にさせるように仕向けてたとしても、ちゃんと独禁法にひっかかるのだろうか?〉

 公取委は引き続き調査を続ける方針だという。

source : 週刊文春 2019年8月1日号

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