真の危機は見えづらい。2月1日からキャンプが始まったプロ野球のことだ。
昨年から今年1月にかけて、ドラフトルールを始めとして、経営の根幹を揺るがすような問題が次々と明らかになっている。ところが、当事者の多くがそこから目を背けているから、危機と病はさらに潜行している。

危機を象徴する一つが、昨年10月のドラフト会議が開催される1カ月前、12球団のスカウト部宛てに届いた「ドラフト辞退」の文書だった。東京の名門進学校・桐朋高校と野球部監督、所属する森井翔太郎選手、その保護者からだった。
森井選手は「投げては最速153キロの右腕、打っては高校通算45本塁打」とスポーツ紙に記された投打二刀流の選手である。高校生トップクラスと評価され、ドラフトの目玉でもあった。

〈アメリカに視察に行き、以前からメジャーリーグへの憧れを持ち続けていた気持ちがより一層強くなり、帰国後に森井家、本人と面談したところマイナーから挑戦する決意を固めたことを確認いたしました。つきましては、日本国内のプロ球団へ進む可能性は無くなりましたので、(中略)ドラフト会議において日本国内の12球団から御指名を頂いても、固辞させて頂く事になりました〉
その文書には、〈17歳の青年が悩みに悩んだ末の結論でございます〉ともあった。
スカウトたちは仰天した。青年の憧れと勇気は止めることができない。私は森井選手の行動を聞いて「extraordinary(並外れた)」という言葉を思い出したが、スカウトたちから見ると、文書は高校卒業後に直接メジャー球団に挑戦する有力選手がとうとう現れたことを意味したからだ。
もっとスカウトたちを驚かせたことがある。報告を受けた上司たちが何ら手を打たなかったことだ。スカウトの一人が言う。
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source : 週刊文春 2025年2月13日号