【前回までのあらすじ】札幌の大学に通うマチは狩猟免許を取得。就活も終え、二年目の猟期が始まった。マチは、初めて一人で入った山でクマに遭遇し仕留めるが、痩せたクマを撃ったことを後悔していた。猟友会会長の新田にその経験をリセットしたほうがよいとアドバイスされ、再びアヤばあを訪ねたマチ。あらためて山に入り、自分が一人で猟に出る意味を確認する。

 

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 大学の卒業式の日がきた。雲ひとつない晴天だった。マチは父方の祖母が貸してくれた加賀友禅の振袖と袴姿で臨む。華やかな装いの一方、高揚感はあまりなかった。卒業するからには卒業式に出なければならない、身内が望む格好があるなら拒む理由はない。その程度だった。

「岸谷さーん! 一緒に写真とろ!」

「うん、オッケー」

 式の前、ロビーで友人や、友人ではない同級生が次々と共に写真を撮るよう頼んでくる。マチは拒まない。就職活動時期に磨きをかけた感じの良い笑顔を浮かべもする。しかし心が浮き立つことはない。

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source : 週刊文春 2025年3月27日号