独自の目線で時事や文化に切り込んできた太田光。現在の太田光を形作った挫折と、テレビへの思いとは? 「週刊文春WOMAN」に掲載されてきた連載の特別篇第3弾にして連載最終回を、拡大版でお届けする。

太田の事件簿ならぬ、俺の履歴書の3回目だね。前回は大学を中退し、芸人としてデビューした1988から90年までのお話だった。まだ渋谷のラ・ママ※1でコントをやってた以外は何の実績もない爆笑問題が、急に期待の新人扱いされちゃって。俺は、そんなポジションに戸惑いながら、まる2年を迎えてた。そん時の4月には、各局で爆笑問題のための企画書が回ってたんだよね。
事件001 テレビに出れない3年間
期待のルーキーとはいえ、全国枠の知名度はまだない。そんな中で、当時在籍してた太田プロが春の改編期を狙って俺らを売り出そうとしてた。俺らが退所する騒動は、そのタイミングで起きたの。
事の起こりは、当時のマネージャーが「自分も辞めるから事務所を出よう」と誘ってきたことから始まるの。俺ら以外にも二組に声をかけて、先に彼は事務所を辞めた。困ったことに、先に辞めちゃったことは俺らには事後報告だった。さらに問題だったのは、彼が「この業界から足を洗うので」と嘘を言って出たこと。芸能界自体を辞めるって言ったやつの元に俺らが行くのはマズいじゃん。その時に、これはうまくいかないと悟っていたけど、辞める約束は約束だから反故にできない。「お前、副社(事務所で采配を振るった副社長の磯野泰子※2氏)に会って説明しろよ」と頼んでも、逃げるんだよ。だから俺が事情を説明に行った。ずいぶん説得されました、「絶対上手くいかない」ってね。結局、他の二組は残留を決め、爆笑だけ退所することになったんだ。

俺もね、そんな形で辞めた以上、今後は大変だろうとは思ってた。出てった当初も、レギュラーだった『鶴ちゃんのプッツン5※3』や『LIVE笑ME!!※4』での降板が決まった時点で、「これはヤバい?」と薄っすら感じてた。それでも営業の仕事はあったし、業界の空気に左右されないNHKの『メガロックショー※5』の司会と、太田プロのタレントが出てないテレ東の深夜枠『水着でKISS ME※6』ではミニドラマに出演してたから、なんとかなるんじゃないかとも思ってた。だけど、テレ東の方から先にレギュラーが終わり、NHKも放送終了。ここで、いよいよ仕事がなくなる、と焦り始めた。
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source : 週刊文春WOMAN 2025春号