空模様の縫い目を辿って
石畳を駆け抜けると
夏は通り雨と一緒に
連れ立って行って
しまうのです
モンモンモコモコの
入道雲です
モンモンモコモコの
夏なんです
──「夏なんです」
(作詞・松本隆、作曲・細野晴臣)

 

「これが『石畳』の階段で、登った先には『鎮守の森』の伊香保神社があるんだ」

 ここは湯の街、伊香保温泉。わたしは松本さんと三六五段の石段を登っていた。いまは「ギンギンギラギラ」の夏ではないので、「モンモンモコモコ」の入道雲もなく、雪の気配がする「しんしんしん」な季節。石段が険しいですね、とわたしが言うと、「子どものころは『駆け抜ける』ことができたけど」と松本さんが息も絶え絶えに独りごちる。

「キツいよ、75歳には」

石段の頂上にある伊香保神社で。
源泉のそばで一休み。

 作詞家・松本隆さんゆかりの地を松本さんと一緒に歩く「風街さんぽ」。2023年からCREA WEBで連載を続けているが、今回はその出張編である。はっぴいえんどの名曲「夏なんです」の舞台となった伊香保へ、一泊二日の旅。

伊香保への道中で水沢うどん(大盛)を食す。

夏休みは伊香保が定番の少年時代

 松本さんは東京で生まれ育ったシティボーイだが、ファミリーヒストリーをたどればルーツは群馬。父・亘司さんは高崎、母・知子さんは伊香保の出身。ゆえに、子どものころは、夏休みになるたびに群馬へ行き、母の実家の伊香保でひと夏を過ごすのが定番だった。

「母方の祖父に可愛がられていたのもあると思う。おじいちゃんはとってもハイカラな人だった。いつも帽子を被って懐中時計を持ち歩き、ぼくにはひらがなよりも先にローマ字を教えてくれたし、蓄音機でジャズを聴かせてくれたりもした。

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source : 週刊文春WOMAN 2025春号