4月13日に開幕した大阪・関西万博。福岡伸一さんはパビリオン「いのち動的平衡館」のプロデューサーを務めている。その設計を手がけた橋本尚樹さん、インスタレーションを担当した緒方壽人さんとともに、目指すべき「未来社会」について考える。
福岡 いよいよ「大阪・関西万博」が開幕しました。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとするこの万博で、私がプロデュースしたパビリオン「いのち動的平衡館」が提示するのは「いのちを知る」。生命は常に先回りをして自らを壊しながら再び作り上げるという動的平衡の考え方を伝えるものです。パビリオンの設計を担当した橋本さんと、インスタレーションを手がけた緒方さんは、技術を用いてその理念を表現してくれました。まず、パビリオンの建物は直線がなく、細胞膜がふわりと大地に降り立ったような不思議な形です。

橋本 学生時代から曲線によって作られるデザインに興味を持っており、今回も針金をクネクネと動かしてさまざまな形を構想した末に、あの形状に行き着いたんです。ただ、そこまでには紆余曲折がありましたね。
福岡 当初、私は太陽の塔ならぬ「生命の塔」を建てたいと考えていました。東京スカイツリーが634メートルなのは「武蔵国」にちなんで、というところに着想を得て、「浪速の塔」だから728メートルがいいな、と(笑)。繭状の球体の一部が空に伸びて……というタワーを最初の案として提示していました。

橋本 実際に建てられるか計算してみたのですが、夢洲のような埋立地に高い建物をつくるのは難しくて。
福岡 それに、パリ万博のエッフェル塔に象徴されるように、万博で高い塔を建てるのは過去のモデルだと知り、考え直しました。
橋本 福岡先生の生命観を建築で捉えるといろいろな側面がありますが、特に着目したのは、「生命の構造は、一つ一つは弱くても、組み合わさるとバランスを絶妙に保ちながら頑丈になり上手く機能する」という点。その状態を建築で表現したいと思いました。屋根に当たる部分は膜で出来ていますが、内部に柱はありません。周囲に鋼製のパイプが一周通っており、その間にケーブルが引かれていて、それだけで自立しています。軽くて弱い材が集まり、構造的に上手くバランスしあうことで、柱がなくてもふわりとした形状を保つことができています。
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source : 週刊文春 2025年4月24日号