おれはね、この日が来るのを五年半、待った。生田斗真が演じる筋金入りのニート青年、岸辺満が、あーだこーだ屁理屈こねまわすシーンを観ながら、腹を抱えて大笑いする日がまた来ないかと思ってね。

 待ちに待ったそのドラマに再会できるとは。『俺の話は長い~ 2025・春~』が二週にわたって放映された。前回は二〇一九年の秋だから、その直後にコロナ大流行で世の中は一変。しかし満の生活は、ほとんど変化しなかった。

生田斗真 ©文藝春秋

 満には、気の強い姉の綾子(小池栄子)がいて、その追及をかわしたり、論点をズラすために、屁理屈大王ともいえる才能が進化したり、居直りだけは一人前になった節もある。

 前回ではまだ十五歳だった綾子の娘、春海(清原果耶)も大阪の大学に進み、二十歳になった。母の綾子はバツイチで、いま一緒に暮す光司(安田顕)は心優しい男だが、血のつながりのない光司を、十五歳の春海は素直に父と認めることが出来なかった。好きな男の子にも失恋し、心がボロボロの春海に自然に接しようとする満も、いい奴でさ。

 思春期特有の不安定な心理になった春海を、満はクルマに乗せて海までドライブに誘ってたな。海辺でメソメソする春海を、満が距離を置いて、気を鎮めたりね。「満兄ちゃん、クルマに乗っけてよ」とぶっきら棒に言われて「どこへ」と問うと「夜の海に決ってるでしょ」というシーンもあった気がするけど、おれの勘違いかもしれない。

 ともかく十五歳の悩み多き少女にとっては、社会生活に真っ当に適応できない“あたしの叔父さん”だけが、心を許せる唯一の相手だ。満と春海。辛い状況になっても、二人で会うと心が自然とほぐれる。

 今回、大阪から帰ってきた春海は、満の言動を見ると、「満兄ちゃんは変わらないよな」と半ば呆れたように声を掛ける。すると満は「変わるのは簡単だけど、変わらないのは努力がいるから」と、反射的に姪に向かい屁理屈で応じる。

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source : 週刊文春 2025年4月24日号