乗客と運転士計107人が死亡、562人が負傷したJR史上最悪の事故から20年。これほどの大事故であってもJR西では記憶が風化し、経験や教訓の継承が難しくなってきている。闘い続けてきた遺族は何を思うのか。

「事故を起こした加害企業として達成しなければいけないのは、日本で最も安全な鉄道会社になること。まだまだ課題が多く、取り組んでいかなければならないこともたくさんある。そのことを(遺族・被害者の)お話をうかがうたび、お姿を拝見するたびに強く感じているところです」
2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故から20年を迎えるにあたり、今月18日、報道各社の共同インタビューに応じたJR西日本の長谷川一明社長はそう語った。
19年12月の就任から5年余り。まもなく会長に就任する予定だが、社長在任中は事あるごとに「福知山線列車事故のような重大な事故を二度と発生させないことが、JR西日本グループの責務であり、変わらぬ決意だ」と繰り返してきた。
1時間半に及んだ質疑の中で、とりわけ印象に残ったのは、こんな言葉だ。
「安全と経営は二律背反ではなく、一体のものである。安全なくして事業の発展なし。その思いを経営層はしっかり持たなくちゃいけない」
これは、私が長く取材してきた遺族の淺野弥三一(83)が、今から11年前の事故命日に同社幹部たちに語りかけたメッセージそのままだ。後述するように、淺野は長谷川体制になってからのJR西に対しては一時の協調的姿勢を撤回し、厳しい目を向けている。それでも、加害企業トップと遺族の間で一つの理念が今も共有されていることは、長年にわたる闘いをそばで見てきた私には感慨深いものがあった。
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source : 週刊文春 2025年5月1日・8日号