特大号恒例の「文春俳壇」。常連さんから新顔さんまで、たくさんのご投稿をありがとうございました。その中から三十句と、いま鑑賞したい名句を俳人の池田澄子さんが紹介します!

 

家あつて若葉家あつて若葉哉 正岡子規

子規には〈若葉して家ありとしも見えぬ(かな)〉という句もあります。若葉が育ち家が隠れて見えないと。掲句では、家が見えて若葉が見えて、また家が見えて若葉が見えている。〈職業の分らぬ家や枇杷の花〉という句もあり、人の住む家、即ち人が好きなのですね。

 

子に五月手が花になり鳥になり 岡本 眸

「五月」という言葉は人を明るくします。もちろん草木も。子どもたちはなおのこと、寒くなく暑くない五月を愉しみます。鳥のように手を広げ、空を飛ぶように野を走ったり、野の花を真似て手を開いたりつぼめたり。いいえ、心が花になったり鳥になったり。

 

われは恋ひきみは晩霞を告げわたる 渡辺白泉

美しい恋の句と言ってよいでしょう。「われ」と「きみ」の平仮名が、二人の体温、体臭を消して、ひたすら純粋な二人の姿、更には後ろ姿を思わせるように感じませんか。「(ばん)()」は夕方に立つかすみ、夕焼け、と『広辞苑』に。こういう句、私も生涯に一句欲しいです。

 

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source : 週刊文春 2025年5月1日・8日号