気鋭のライターが西郷隆盛と共に西南戦争を戦い歴史の闇に消えたある武士の謎に挑んだ歴史ノンフィクション。待望の連載再開。

 

【令和6年(2024)5月16日 福島県石川郡浅川町】

 おりからの強雨で山頂の神社へと通じる山道は泥濘(ぬか)るんでいた。手すりはなく、斜面に手をつき、這うようにしてようやく辿り着いた。

 誰もいない小さな社の引き戸に手をかけると、想像以上に重い。小さく呻きながらこれを押し開くと、差し込んだ光が壁に掲げられた古びた大きな絵を浮かび上がらせた。

 その絵にはあちこちで炎が吹きあがる山間の村落で、軍服姿の男たちが刀を振り上げて敵方と思しき男に殺到する様子が描かれている。やや稚拙なタッチが、かえって妙な迫力を醸し出す。

 とりわけ異彩を放っているのが、赤いふんどし1本の裸形を晒して、兵たちを鼓舞するように大手を振って闊歩する1人の男の姿だ。

 一説によると、この男は永山(ながやま)()一郎(いちろう)とされている。私がこの連載で追いかけている人物でもある。

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source : 週刊文春 2025年5月22日号