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「森野将彦 聖域に入ったメス」|鈴木忠平

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか 第5回

鈴木 忠平

連載

エンタメ 社会 スポーツ

「あそこからはよく見える」。立浪の守備の綻び。それを落合は見逃していなかった。

 

(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)

 森野将彦はバットを持つ手に、確かなものを感じていた。

《ここまで来た……。もう少しだ》

 2006年3月25日、ナゴヤドームではヤクルトとのオープン戦が行われていた。開幕までの予行演習は、あと2試合を残すのみ。どの球団も新シーズンのベストオーダーを組んでいた。そのゲームに森野は7番サードで先発出場していた。

 

 あの立浪和義からレギュラーを奪う。サードを奪う。チームの顔であるスター選手に挑戦状を叩きつけたのは、前年の秋だった。それから森野は、もうかつての森野ではいられなくなっていた。グラウンドでもロッカーでも、自分がいると、その場の空気が硬く張りつめていく。チーム内には立浪を信奉する者が多くいる。その聖域を奪おうとする者は集団から孤立せざるを得なかった。

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source : 週刊文春 2020年9月17日号

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