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11億詐欺逮捕社長は小池百合子のタニマチだった 元同居男性が“最高顧問”

「週刊文春」編集部
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生田氏(右)のために花を出した小池氏
生田氏(右)のために花を出した小池氏

 横浜のみなとみらいに聳え立つランドマークタワー19階に、太陽光発電や浄水装置開発などを手掛けるテクノシステム(以下テクノ社)はある。フロアの奥には湾岸エリアが一望できる応接室。案内された投資家たちが座る上座の背後の壁には、事業が紹介された新聞記事の切り抜きとともに、生田尚之社長(47)が有名人と撮った写真がズラリ。ひときわ目を引く一枚は、小池百合子東京都知事(68)との写真だった――。

 

 
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 生田氏らテクノ社の幹部3人が、5月27日、東京地検特捜部に詐欺の疑いで逮捕された。

「生田社長らが昨年、太陽光発電やバイオマス発電の設備への融資名目で虚偽の書類を出すなどして、金融機関から計約11億6500万円を騙し取った容疑です。同社は昨年末には既に債務超過に陥っており、借金をしては別の債権者への支払いに充てる自転車操業状態だった」(社会部記者)

 負債総額は約150億円。生田氏は逮捕直前まであの手この手で金を引っ張ろうとしていた。テクノ社の大株主の一人で、株式会社ナックの名誉会長・西山由之氏が語る。

「今年3月に生田氏から連絡があり、『埼玉のゴルフ場の土地に太陽光パネルを設置するので3億円貸して欲しい。売れれば18億円になるから』と。もちろん断りましたよ」

 4月末にはテクノ社に家宅捜索が入り、生田氏も検察の聴取を受けていた。だが知人によると、「詐欺でも何でもない。見積もりから少しズレただけ」と反省の色はなかったという。

 生田氏は贅の限りを尽くした生活を送ってきた。テクノ社の元幹部が明かす。

「数年前の生田氏の役員報酬は約2億5000万円もあった。銀座の高級クラブで自分の係の子の『誕生祝いだ』と言っては、ドンペリゴールドやオーパスワンを何本も空けていた。ラスベガスやシンガポールなどのカジノに飛んでVIPルームで遊び、億単位の金を使ったこともある」

「これから小池さんと会う」

 なぜ多くの投資家や金融機関が生田氏を信用してしまったのか。最大の理由は応接室の写真が示す、有名政治家との関係だ。

「社長は政治家との関係を誇示していた。小泉純一郎元首相と食事や対談をした、原田義昭元環境大臣とは昔から知り合いだなどと語る。再生可能エネルギー事業に理解ある政治家と近いと思わせ、安心させる狙いがあった」(元テクノ社社員)

 中でも最も濃密な関係を築いていたのが小池氏だ。小池氏は小泉政権下で03年から05年まで環境大臣を務め、都内の自宅は太陽光発電パネルを設置した、「エコだハウス」と称するエコな邸宅である。テクノ社は12年ごろから太陽光発電事業に本格参入し、生田氏は13年、小池氏の衆院議員時代の資金管理団体「フォーラム・ユーリカ」に50万円を献金。その2年後には同じく彼女が代表の「自由民主党豊島総支部」に、150万円もの個人献金をしている。そして、小池氏からも“お返し”するほど深い仲だった。

「19年にテクノ社が運営する『肉匠いく田』がオープンした際には、『祝御開店 小池百合子』と立て札をつけた花を送ってもらった。入り口脇の目立つところに飾られていた。都知事就任後も社内で生田社長が『今日は、これから小池さんと会う』と語るなど、親しさをアピールしていたことも」(前出・元幹部)

 小池氏が忙しい公務の合間を縫って会うほどの関係だった2人。そこにはもう一人キーマンがいる。小池氏の“いとこ”を自称する水田昌宏氏だ。

「小池氏が環境大臣の際には大臣秘書官を務め、その後、公設秘書も務めていた。生田氏が献金した『フォーラム・ユーリカ』や『自由民主党豊島総支部』の会計責任者を務めていた金庫番です」(政治部デスク)

 水田氏は10年には「エコだハウス」の土地・2分の1、建物・5分の1の共有者となり、妻や子供と共に小池氏と同居を始める。門柱には「KOIKE」「MIZUTA」という表札が並んでいた。

「水田氏の妻も16年の都知事選時、小池陣営の出納責任者を務めていた。同居は数年前に解消。家の持分も小池氏に戻り、『MIZUTA』の表札は外されましたが、登記簿など公的書類上の水田氏の住所は今もエコだハウス至近のマンションです」(事務所関係者)

 水田氏は、巨額の詐欺事件を起こしたテクノ社とどういう関係なのか。別の元社員が声を潜める。

「社内での水田さんの扱いは別格でした。登記簿などには出てきませんが、いわば『最高顧問』のような立場で毎月『外注費』として50万円ほど支払っていた。Tシャツに短パンのラフな格好で会社に現れ、子どもを連れてくるなど我が物顔で社内に出入り。生田社長は煙草が大嫌いなのですが、水田さんが来ると特別に灰皿が差し出され自由にタバコを吸っていた。水田氏が帰った後、空気清浄機を2台、室内に入れていました」

 水田氏と生田氏の極めて親密な関係を示すのが、あるマンションの売買取引だ。場所は新宿区百人町。築30年近い、30㎡にも満たない単身者用の物件だ。

 登記簿謄本を捲ると、小池氏が都知事選で勝利した5日後の16年8月5日、水田氏はこの物件を購入。だが翌年の10月24日、水田氏は生田氏に売却しているのだ。地元の不動産屋曰く、この物件は「1500万円程度」。役員報酬2億を超え、横浜に豪邸を持つ生田氏がわざわざ投資用に買うとは考えにくい物件だ。

所得税も贈与税も……

 さらに奇異なのは、翌年8月28日、生田氏ははやばやと同物件を売却。だが何と、売った相手は関西在住の水田氏の親族だったのだ。親族は3カ月後、別の人物に売却している。

 不可解な取引は何を意味するのか。税理士の加美裕史氏が、「あくまで一般論」と前置きした上で解説する。

「不動産を特定者間で回転売買するケースは、不動産取引を隠れ蓑にした資金移転の可能性があります。例えばA氏が2000万円で買った物件をB氏に2000円で売却。そしてA氏の親族が1000万円で買い戻すとします。この場合、B氏からA氏側に対する1000万円の実質的な贈与になりますが、A氏は不動産取引を隠れ蓑に所得税も贈与税も申告しない可能性もある。ただこれは脱税になりかねない」

 また、水田氏はテクノ社の株を17年に33万3334株取得。1株150円だから、額面通りの取引なら、約5000万円を出資した大株主でもある。

 一連の経緯が示すのは、逮捕された生田氏は小池氏の大口献金者であり、小池氏の元金庫番の水田氏にも多額の外注費を支払い、奇妙な不動産売買を行っていたという事実だ。生田氏は小池氏並びに水田氏にとって“タニマチ”とも呼べる存在だったのである。

 当事者たちはどう答えるのか。生田氏には逮捕の2週間前に質問状を送っていたが回答はなかった。水田氏にも、現在監査役を務める会社を通じて質問状を送ったが、回答はなかった。

 小池氏にも逮捕された企業トップから献金を受けていた経緯などについて都に訊ねたが、「公務と関連がないためお答えできません」と一言のみ。

 テクノ社に出資した、都内在住の男性が憤る。

「私がテクノ社の株を買った決め手は、生田氏が『小池さんなど政治家の方々と知り合いだ』と言ったから。実際に会社に行ったら写真もあった。都知事も知り合いの会社なら信用できると思って投資したんです」

 都知事の信用が舞台装置となった詐欺事件。持ちつ持たれつだった小池氏は知らぬ存ぜぬでは通るまい。

source : 週刊文春 2021年6月10日号

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