「福留孝介 2つの涙」|鈴木忠平

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか 第8回

鈴木 忠平
エンタメ 社会 スポーツ

 優勝を決める打席。福留の脳裏に落合の声が甦る。「一流のものは、シンプルだ」

 

(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)

 

 2006年シーズンも押し詰まった9月21日、東京・世田谷の落合邸は人でごった返していた。

 ヨーロピアン調の長いテーブルには落合を囲むように番記者たちが座り、その後ろで各社のカメラマンが渦中の指揮官にレンズを向けている。さながら記者会見のようだ。ただ、どちらかと言えば、座の主役は落合ではなく、その隣にいる夫人だった。

「大切なものなの。落合も私も息子も、ずっと同じものを持ってきた。もし、バッグを持っている人がいたら、あれだけでも返して欲しいの」

 夫人は報道陣ひとりひとりの目を見て、訴えかけていた。落合はその横で視線を床にやったり、宙に泳がせたりしていた。いつも一点を見すえ、確信めいたものを感じさせる落合が、妙にそわそわとしていた。

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source : 週刊文春 2020年10月8日号

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