「山井がダメだと言った」岡本は、落合が繰り返す言葉に心の揺れを感じていた。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
《この試合について、一体、何を報じるべきなのだろうか》
私は記者席で自問していた――。
9回表、岩瀬仁紀が最初のアウトを奪った。「死神の鎌」と呼ばれるスライダーに、日本ハムの先頭バッター金子誠のバットは力なく空を切った。その瞬間、ナゴヤドームはようやくいつもの歓声を取り戻した。完全試合を目前にしていた先発投手、山井大介の交代に向けられた怒号は止んでいた。半世紀ぶりの日本一へと近づく緊迫感によって、ひとまず収束しているようだった。
席のモニターにはベンチの左端に座る落合と、その反対側にいる山井が交互に映し出されていた。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
-
月額プラン
1カ月更新
2,200円/月
初回登録は初月300円
-
年額プラン
22,000円一括払い・1年更新
1,833円/月
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
有料会員になると…
世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!
- スクープ記事をいち早く読める
- 電子版オリジナル記事が読める
- 解説番組が視聴できる
- 会員限定ニュースレターが読める
source : 週刊文春 2020年11月12日号