100冊を超える著書を上梓し、多くの学生を知の旅に導いた。角栄、共産党、サル学、宇宙、臨死体験、がん……森羅万象に好奇心を向け続け、取材し、発信した“知の巨人”。その濃密な80年の人生が伝える「遺言」とは――。
「昨年、東大病院を出て旧知の病院に移ったと聞いた時に、もう戻れないんだろうなぁと覚悟はしていました。ただ、実際に訃報を聞くと、世界が変わってしまったというか、“立花なき世界”にどう慣れていけばいいのか……」
こう吐露するのは、田中角栄や共産党に関する取材を手伝った、一つ年下のノンフィクション作家・小林峻一だ。
立花隆(本名・橘隆志)。享年80。4月30日、午後11時38分、冠動脈が突如ふさがる「急性冠症候群」で急逝。ナースコールで呼ばれた看護師が院長に連絡したが、到着を待たずに逝ったというから長く苦しむようなことはなかったはずだ。本人が「生命の大いなる環の中に入っていく感じがいい」と望んでいた樹木葬で、5月4日、家族にひっそりと見送られた。しかるべき手続きがすべて終わるまでは進んで公表する予定はなかったが、察知した毎日新聞が6月23日に報じて公になった。
東大時代に反核を訴える欧州無銭旅行をともにした同級生の駒井洋(筑波大学名誉教授)が語る。
「亡くなって2カ月も経ってから情報が出るのもなんだか少しミステリアス。“脱規範性”という意味では、いかにも引揚者っぽいと思います。彼は北京、私は大連からの引揚者ですので、そういう点でも馬があった。生粋の日本人に対して距離感があって、非常に強い反戦平和意識がある。放浪好きで、自らの行動力に自信があり、運命を自力で切り開いていく。本質的にノマド(遊牧民)なんです」
50年来の友人である編集者の関口博夫は、死の2週間前に立花と長電話をしたと明かす。
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source : 週刊文春 2021年7月8日号