「来年の戦いに勝たないといけない」落合の言葉に中田は風向きの変化を感じた。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
その瞬間、中田宗男の中で、小さな何かが決壊した。
2008年のドラフト会議、中日ドラゴンズは日本通運の24歳、野本圭を1位で指名した。楽天と競合した末に、球団社長の西川順之助が交渉権確定の封筒を引き当てた。
つまり球団は今、目の前の勝利をつかむことを選んだ。落合の正義と、中田のそれは交わることはなかった。
欲しかったものを手中にした落合は番記者たちの前で言った。
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source : 週刊文春 2020年12月3日号