政府が送り出す国際機関の幹部ポストを巡り、静かな危機が進行している。一つはIMF副専務理事、もう一つはOECD事務次長だ。いずれも日本の「指定席」だったが、中国、韓国の猛攻に遭い、後任を出せるかが危ぶまれている。9月にも内定すると見られる後任人事に向け、ロビー活動を主に担う財務省では「1つでも落とせば幹部の首が飛びかねない」(関係者)と緊張が高まっている状況だ。
米ワシントンに本部を置くIMFには約190カ国が加盟。議決権は出資比率に応じて与えられ、日本は米国(17.4%)に次ぐ2位(6.5%)だ。しかし中国が急速に出資比率を高めており、現在は3位の6.4%まで肉薄。逆転はもはや時間の問題だ。
IMFのトップである専務理事は欧州から、ナンバー2の筆頭副専務理事は米国から出すのが不文律で、日本からは主に財務省の国際部門トップで次官級の財務官経験者が副専務理事に就いてきた。ところが11年、中国がそれまで3人だった副専務理事ポストを4人に増やす“荒技”で、中国人民銀行の朱民・元副総裁を送り込んだ。結果、現在も4人いる副専務理事のうち、アジアから古沢満宏元財務官(79年旧大蔵省入省)と李波・人民銀副総裁(8月に就任予定)の2人が占めており、他地域から不満が高まっているのだ。
古沢氏の任期は昨年までの5年間のはずだったが、人事を巡る不透明感もあり、延長戦に入っている。政府は今、後任に岡村健司前財務官(85年入省)を据えようとしているが、「アジア枠は中国と日本が交代で出せばいいとの主張も支持を増している」(国際金融筋)のが実情で、思惑通りに運ぶ保証はない。
かたやOECDはパリに本部を置き、加盟国は先進国中心の約40カ国。現在、事務総長に次ぐポストである事務次長は3人で、うち1人が河野正道・元金融庁金融国際審議官(次官級=78年入省)だ。
政府は後任に武内良樹前財務官(83年入省)を送り込む算段だったが、事務総長在任が15年に及んだメキシコ出身のグリア氏が6月に退任。オーストラリアで金融相を務めたコールマン氏に交代したことで、一気に不透明感が高まった。財務省幹部は「グリアとは握れていたが、コールマンとのパイプはほとんどなく、手探り状態」と話す。この事務次長ポストは、韓国が奪取に向けて熾烈な外交戦を仕掛けているという。
武内氏と言えば、森友学園側に国有地払い下げを決めた当時の近畿財務局長。説明責任を果たさないままに出世を続けたが、パリでの優雅な天下り生活に暗雲が垂れ込めている。
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source : 週刊文春 2021年7月22日号