「エジプトはナイルの賜物」
世界史の授業で、この言葉を聞いた人も多いことでしょう。ナイル川が運ぶ肥沃な土のおかげで、農業が栄え、エジプトの壮大な文明が築かれたという意味です。紀元前5世紀にギリシャの歴史家ヘロドトスが記した著書『歴史』に出てくる言葉です。
そのナイル川の水は誰のものなのか。ナイルの水を巡って戦争になりかねない危機が発生しているのです。
ナイル川の全長は6600キロを超え、世界最長。いくつもの国を通るため、国際河川と呼ばれます。国際河川は、どこでも上流の国が水を大量に使うと下流に大きな影響を与えてしまうので、しばしば紛争になります。
今回は、ナイル川の上流に当たる青ナイルでエチオピアが巨大ダムを建設。ここに貯水を始めたため、下流に位置するスーダンとエジプトが、「水が盗まれる」と激しく反発しているのです。
この問題を考えるために、まずはナイル川の源流をたどってみましょう。ナイル川は白ナイルと青ナイルがスーダンの首都ハルツームで合流し、ナイル川としてエジプトを通り、地中海に注ぎます。
白ナイルと青ナイルというのは、川の水の色から名付けられました。これだけ聞くとロマンチックなイメージを持つかも知れませんが、私は合流地点を取材したことがあります。白ナイルは、途中でさまざまな堆積物や浮遊物が流れ込んで白濁するので、この名前がつきました。要は水質汚染の結果なのですね。
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source : 週刊文春 2021年7月29日号