マネージャーと共に頂点に駆け上がった5人組。あの頃から、ジュリーは日本を動かすカリスマだった。だからこそ、彼らは――。第2章・終幕。
(しまざききょうこ 1954年、京都市生まれ。ノンフィクション・ライター。著書に『森瑤子の帽子』『安井かずみがいた時代』『この国で女であるということ』『だからここにいる』などがある。)
掌底打ちという打撃法がある。掌の手首に近い部分で相手を叩く格闘技の技だ。「もうひとりのザ・タイガース」と呼ばれたマネージャー、空手三段の中井國二は、タイガースに向かって殺到するファンに次々と掌底で当身をして、静かにさせたという伝説を残していた。ダッシュしてくる先頭集団がバタバタと倒れた。無論、怪我などない。それでも今なら問題となる行為だが、そこまでしなければメンバーもファンも守れない熱狂のタイガース旋風だった。
27歳のレコード店主、ブライアン・エプスタインが、リバプールの酒蔵を改装したクラブでボサボサの髪をした若者たちの演奏を聴いたのは1961年11月。それから5年後、渡辺プロダクション入社1年目の中井は京都出身の5人組ファニーズと邂逅する。66年11月9日、中井は、上司である制作部班長の池田道彦と共に京都から上京したファニーズを東京駅で迎えた。その日から千歳烏山の一軒家で中井と5人の合宿生活が始まり、2年近くを互いの傍で暮らすことになる。中井の初任給は2万円で、メンバーのそれは6万円だった。
ポール・マッカートニーと同い年の中井は、この時24歳。加橋かつみも瞳みのるもそれぞれの自著で、出会った頃の中井について同じような描写をしていた。
〈「きみたちは新米だ。おれもまたマネージャーとして新米だから、お互いさまだ。しかしシゴクときは遠慮なくやるよ」彼はメンバーたちにこういっていた〉〈彼の新人育成はきびしく、愛情に満ちていたものだった〉(加橋かつみ『日盛りの街に出て』)
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source : 週刊文春 2021年7月29日号