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コロナのウソとホント あなたはわかりますか?

《ワクチンでバストアップ》《副反応2回目が強い》《2回接種翌日に抗体が“完成”》《2回目難民6週空くとリスク大》《感染増でも医療逼迫しない》《20代コロナ死は10人未満》《感染後遺症は40代が多い》

「週刊文春」編集部
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「この2カ月がヤマ場」と語る尾身会長
「この2カ月がヤマ場」と語る尾身会長

 連日、東京の新規感染者数が1000人を超えるなど、猛威を振るい続ける新型コロナ。政府分科会の尾身茂会長は、この夏を「ヤマ場」と位置付けた。“第五波”を乗り越えるため、巷に溢れるコロナのウソとホントを検証する!

 緊急事態宣言下の東京都は、新規感染者数が連日、1000人を超えている。小池百合子都知事は家での五輪観戦を呼びかけ、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は「まさにヤマ場だ」と、この夏を位置付ける。

小池都知事は「4連休はお家で五輪を」
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 新型コロナウイルスの日本上陸から1年半。続々と誕生する変異株、目まぐるしく変わる感染状況、ワクチンの意外な副反応……常に新情報がもたらされてきた。だがその一方、「それ本当なの?」と首を傾げざるを得ない“怪情報”が飛び交っているのも事実だ。

“第五波”を迎えたいま、巷間言われる“ウソとホント”を検証したい。

「新規感染者の週平均が、2406人に達する」

 7月15日、都のモニタリング会議で、現在のペースだと東京五輪閉幕後の8月11日にはこの人数に達すると報告された。だが「ワクチンがあれば重症化はせず、医療は逼迫しない。だから感染者数に注目するのは意味が無い」との声もある。また7月18日時点で、都の病床使用率は39.2%。一時期に比べれば高くは見えないが――。

「危険水域に相当近い数字。50%までに留めないと、逼迫は避けられなくなる」

 こう危惧するのは、東北大学災害科学国際研究所の児玉栄一教授だ。入院患者の一部は、人工呼吸器を必要とする「重症」に転じ、集中治療室に入る。

「重症患者に使うエクモは膜フィルターや回路が詰まることがあり、定期的に交換やメンテナンスが要ります。常に予備も必要で、10台あっても、10人の患者に対応できるわけではないのです」(同前)

 高齢者へのワクチン接種が進む一方、顕著になっているのが、40代・50代の重症者割合の増加だ。以前は60代以上が重症者の大半を占めていたが、7月に入り、都ではこの2つの年代で3割を超えた。

 杏林大学医学部付属病院呼吸器内科の皿谷健准教授はこう話す。

「入院患者の年代が明らかに下がっています。巷では『50代問題』と呼ばれますが、当院では現在、ほとんどが60歳未満。以前と比べて治療方法が確立しておりますが、それでも一定の割合で重症化する方はいる。人工呼吸器の管理が必要な重症患者の治療は現場の負担も大きく、増えれば対応にも限界があります」

 厄介なのは、重篤化の手前にありながら、自覚がほとんどない「ハッピー・ハイポキシア(幸せな低酸素血症)」という病態だ。

「少し呼吸に違和感がある程度で、ケロッとしている人が意外と多いのです。しかしある段階から急激に悪化する。そのため常にモニタリングをしなければなりません」(同前)

皿谷氏

 感染者増と医療提供体制の逼迫は、今なお相関関係にあるといえる。

 そこでいま増加しているのが若者の死者数だ。

 これは、従来株に比べ感染力が強く、重症化しやすい変異株の流行が影響している。池袋大谷クリニックの大谷義夫院長が指摘する。

「1年前は考えにくいことでしたが、今は基礎疾患のない20代・30代の方が感染し、肺炎に至るケースがあります。アルファ株が主流となった第四波以降は、自宅以外でマスクを外す瞬間がなかった人でも、検査で陽性になった例が複数みられるようになりました」

大谷氏

後遺症で職を失う人も

 若者は感染しても無症状か軽症で済む、と言われたのは、もはや過去のこと。

 国内ではまだ10代以下の死亡例はないが、20代を超えると、犠牲者も確認できるようになる。

 今年1月の時点で、20代の死者数はわずか1人。だが7月12日現在では7人に増えており、10人未満だが油断は出来ない。なお30代は8人から27人、40代は26人から108人と大幅に増えている。

 恐ろしいのは重症化や死亡リスクだけではない。たとえ軽症で済んだとしても、侮れないのが「ロング・コビッド」と呼ばれる後遺症だ。入院患者の8割に後遺症が認められ、症状は200種類以上ともいわれる。

 新型コロナ後遺症外来を設け、2000人以上の患者を診てきたヒラハタクリニックの平畑光一院長の話。

「コロナの後遺症は、感染後に作られた自己免疫が自分自身を攻撃してしまうことで引き起こされると考えられています。味覚・嗅覚障害や脱毛がよく知られていますが、それ以上に多いのが、倦怠感や気分の落ち込み、ブレインフォグと言われる思考力の低下。その名の通り、脳に霧がかかったようになるブレインフォグは、記憶障害が出ることもあります」

 中でも甘くみてはいけないのが倦怠感。体が鉛のように重くなり、トイレに行くのすら困難になることも。

「兆候として気を付けなければいけないのは、軽作業やちょっとしたストレスの後、数時間して急激に倦怠感に襲われる“PEM”という状態。無理を続けると、仕事に行けなくなって職を失ったり、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という難病に移行することもある」(同前)

 後遺症は基礎疾患の有無にほぼ関係なく、無症状感染であっても発症する。年代によって差はあるのか。

「当クリニックの患者さんを年代別でみると、以前は40代がダントツで多かったのですが、今や30代が追いつき、追い越そうとしています。次に20代、50代と続きます。女性が男性の1.44倍。複数の症状が出ているのは珍しくなく、1年以上、苦しんでいる人もいます」(同前)

平畑氏

 ただ、早めに医療機関にかかれば症状の改善は可能だ。また、現在はコロナの感染リスクを抑えるワクチンがある。いま日本で接種されているのは、ファイザー製とモデルナ製の2種。ともに対コロナの遺伝子情報を伝え る「mRNAワクチン」である。

 ワクチンには特に、虚実ないまぜの風聞が溢れており、「打つと不妊になる」「遺伝子が書き換えられる」といった情報は事実ではない。

「mRNAワクチンは体内に入るとすぐに分解されて消失します」(前出・大谷氏)

 ほかにも、海外ではファイザー製のワクチンを接種した後、バストサイズがアップした女性の話題が紹介されたが、あり得るのか。科学部記者が解説する。

「実際にはそのような副反応の報告はない。専門家の間では、接種後にリンパ節が一時的に腫れただけではないかと見られています」

 mRNAワクチンは新しいタイプの予防システムだけに、長期的な影響を懸念する声も根強いが、児玉氏はこう話す。

「新規のmRNAワクチンを打った20~30年後のことは誰にも分かりません。でも、新しいウイルスのコロナウイルスに感染後の未来でも同じことが言えるわけですから、それならワクチンを打って感染対策をした方がよいと思います」

 一方、接種後の副反応については「2回目の方が強く出やすい」といわれているが、それは事実だ。

 主な症状は腕の痛みのほか、疲労感、関節痛、頭痛、発熱など。鹿児島大学の西順一郎教授が解説する。

「副反応は異物として入ってきたワクチンに対する体の免疫応答で起こります。一度目は免疫が十分に反応しきれませんが、免疫を担当するリンパ球などがこの異物を記憶し、鍛えられます。そのため二度目は桁違いのリンパ球が反応し、強い免疫応答が起きる。それが痛みや熱として現れるのです」

西氏

デルタ株には効果が落ちる

 

 つまり、副反応はコロナと戦える体を作る“通過儀礼”のようなものだという。大谷氏が付け加える。

「コロナは自分や周囲の命に関わる感染症。長引く後遺症に苦しむ方も少なくありません。対してワクチンの副反応は、1日2日で収まります。患者さんには『発熱や頭痛を生じる頻度の高いワクチンですが、解熱剤や鎮痛剤などで対処できます、打つメリットの方が大きく上回ります』と説明しています」

 ファイザーとモデルナのワクチンの有効率は、ともに90%以上だ。接種しておけば、しない場合と比べて感染リスクを9割以上、低下させることができる。ただ、その効果を得るには、2回の接種が大前提となる。

「1回の接種で得られる予防効果は6~7割。2回打って、初めて9割以上の効果が期待できます」(児玉氏)

 2回目の副反応もイヤだし、6~7割の効果があれば十分だと考える人もいるかもしれない。

「いま主流になりつつあるデルタ株は2回接種後でも効果が7割程度に落ちると言われており、1回接種の状態だとデルタ株に感染するリスクは決して小さくない。必ず2回接種を受けてください」(同前)

 2回目を打てば、すぐに抗体が出来上がるわけではないことにも注意。抗体価が上がり、確実に高い効果が得られるのは、どの時期からか。答えは、二度目の接種から2週間より後だ。

「ワクチンを打っている人でも感染する可能性はありますが、mRNAワクチンは、打てばほぼ100%の人に抗体価の上昇が認められます。2回接種し、ある程度の免疫がついている人は、感染しても軽症で済みますし、排出するウイルス量がかなり少なくなり、人にうつしにくくなる。ワクチンは自分の感染リスクを下げるとともに、かかっても感染の広がりを抑える作用もあるのです」(西氏)

 すでに感染歴がある人はどうか。大谷氏が語る。

「自然感染でも抗体価は上がりますが、2回のワクチン接種をした方が、さらに上がることが分かっています。一度感染した方でも打った方がよいでしょう」

 一方で、国のワクチン供給が滞り、2回目接種のめどが立たない“接種難民”の問題も発生している。

 1回目と2回目の間隔は、ファイザー製が3週間、モデルナ製は4週間が基本となる。だが2回目の予約の空きが      なく、1回目から6週間後に――。この場合、ワクチンの効果に影響が出るなどリスクはあるのか。

「間隔を設けているのは短期間で打つと効果が得られにくいため。必ずしもそれ以上の間を空けてはいけないということではありません」(児玉氏)

 ファイザー製は6週間でも抗体量が増えたデータがあり、モデルナ製も上限はない。イギリスは一時、12週間の間隔で打っていた。

「予約が取れなくて多少遅れても、2回打てば十分な効果は得られます。ただ、なるべく早く打っていただきたい。1回だけだと効果が不十分で、感染してしまう恐れがあります」(西氏)

 たとえ間隔が6週間空いても、効果が無くなることはない。ただその間、感染リスクを十分には抑えきれない点は要注意だ。

 コロナに関するウソとホント。あなたはどれだけわかりましたか?

宣言後も人流抑制は出来ていない

source : 週刊文春 2021年7月29日号

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