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国の借金は大戦末期超え 最後は国民が負担する 小黒一正

昭和史が教えるコロナ“失敗の本質”

小黒 一正
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(おぐろかずまさ 1974年生まれ。経済学者。京都大学理学部物理学科卒業後、大蔵省(現財務省)入省。法政大学経済学部教授。専門はマクロ経済学、公共経済学、財政・社会保障。著書に『日本経済の再構築』など。)

 コロナ危機の経済対策のため、日本の財政は急激に膨張してきました。そもそもコロナ禍以前から、国・地方を合わせた日本の借金の総額は対GDP比で200%超。これは1944(昭和19)年の第二次世界大戦末期を超える、歴史的水準です。

 86年前、財政に危機感を抱いていたのが、時の大蔵大臣・高橋是清でした。赤字国債を発行するなど積極的な財政政策を行い、昭和恐慌で疲弊した経済を立て直しましたが、財政赤字は歳入の4割に達する「借金で借金を賄う」状況でした。そこで高橋は国債や戦費の削減を進めようとしたものの、軍部の反発を招き、36年の二・二六事件で暗殺されたのです。これを機に財政規律を失い、戦費の膨張を抑えられなくなっていった。戦中、国は戦費調達のため「国債を国内で消費するかぎり心配はない」と喧伝する冊子を全国に配布するなど、国民に国債の購入を促していました。

 では、莫大な借金はどのように処理されたのか。

 終戦直後、日本がまず直面したのは“ハイパーインフレーション”でした。卸売物価は46年に約433%も上昇したのです。

 そこで政府がインフレの抑制という大義名分を掲げて、46年2月に行ったのが「預金封鎖」と「新円切替」です。5円以上の旧銀行券をすべて銀行などの民間金融機関に預けさせたうえで、生活や事業に必要な一定額だけを新銀行券で引き出せるようにしました。

 さらに、財政再建策として、複数の税制を導入した。その一つが「戦時補償特別税」。政府が戦時中に民間企業へ支払うべきだった代金をそのまま税として徴収する、事実上の“踏み倒し”でした。また財産に最大で90%課税する「財産税」などにより、国民の資産を没収したのです。

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source : 週刊文春 2021年8月12日・19日号

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