ある日、突然メディアの攻撃が 香港で始まった“文化大革命”

THIS WEEK「国際」

野嶋 剛
ニュース 社会 政治 国際

 国家安全維持法が導入されて1年が経過した香港。この間、『リンゴ日報』の廃刊、同紙創業者のジミー・ライ氏や民主活動家のアグネス・チョウさんらの逮捕、民主派排除の選挙制度導入などが続いている。

 それでも中国は手を緩めようとしていない。次のターゲットは「教育界」だ。

 香港最大の教職員労働組合「香港教育専業人員協会」が8月10日、解散を表明した。同協会への攻撃の火の手は突然上がった。7月31日、中国の人民日報と新華社の二大官製メディアが同協会を「香港教育界のガン」「早急に調査すべき」と批判。香港の親中メディアによる同協会たたきの大合唱となり、香港政府教育局は同協会との関係断絶を表明。解散決定まで10日余りでの「粛清劇」となった。

 同協会は約半世紀の伝統を有する教員組合だ。10万人近い会員を誇り、香港立法会(議会)の職能別議席も有し、民主派グループの有力な支持基盤となってきた。

 大学当局が学生に対してデモ参加を控えるよう求めても、同協会の教員が防波堤になった。中国愛国教育導入にも抵抗し、中国からすれば文字通り「ガン」に見えたのだろう。彼らが何か違法な行動をとったわけではない。習近平の対香港「全面的統治」に邪魔な存在だった、というだけだ。今回、解散しなければ、どうとでも国安法で摘発の理由が作られたはずだ。

 各大学の学生組織も攻撃を受けている。学生組織は中国と一線を画そうとする「香港本土路線」の発源地でもあり、アグネスさんなどの人材を輩出してきた。7月に香港大学は学生会の活動を認めないと決定。他大学でも同様に学生会への圧力が強まっている。

 民主派への圧力で恐ろしいのは、どのような法律的根拠があるのか、誰も明確にできない点だ。民主派の評論家は「今の香港では、ある日いきなり善と悪を分断する『紅線』が引かれる」と語る。紅線とは北京政府の鶴の一声で、意向を受けた中国メディアが「悪」と書き、香港の親中勢力や政府が攻撃を始めることを指す。「文化大革命のときと全く同じで、政治的立場が善悪の全てを決めるやり方だ」とこの評論家は憤慨する。

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source : 週刊文春 2021年8月26日号

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