「見てるとこが違う。わかりっこない」二遊間交換の意図を落合は明かさなかった。
(すずきただひら 1977年千葉県生まれ。日刊スポーツ新聞社に入社後、中日、阪神を中心にプロ野球担当記者を16年経験。2019年よりフリー。著書に『清原和博への告白 甲子園13本塁打の真実』、取材・構成担当書に『清原和博 告白』、『薬物依存症』がある。)
荒木雅博は2塁ベース上から、マウンドを隔てた向こうに見えるホームベースを見つめていた。
いつもは届きそうで届かないその距離がなぜか、すぐそこにあるように感じられた。どことなくいつもの自分ではないようだった――。
2011年9月23日、落合の退任が発表された翌日、首位ヤクルトと、追う中日との天王山は、2―2のまま8回裏を迎えていた。
中日はツーアウトから1番の荒木がレフト線へツーベースを放った。リーグ屈指の足を誇る荒木がスコアリングポジションに立ったことでゲームは一気に張り詰めた。
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source : 週刊文春 2021年2月18日号