「ユダヤ人はなぜ差別されてきた?」|池上彰

池上彰のそこからですか!? 第489回

池上 彰
ニュース 社会 政治 国際

 東京オリンピック・パラリンピックの開会式と閉会式でのショーディレクターを務めていた小林賢太郎氏が、過去にお笑い芸人だった時代に、ユダヤ人が大量虐殺された事件を揶揄していたことがわかり、解任されました。

 解任されたのが開会式前日だったので、辛うじて間に合ったというべきでしょう。もし解任されずに曖昧なまま開会式を迎えたら、イスラエル選手団の入場行進ボイコットになったかも知れませんし、アメリカのバイデン大統領のジル夫人も出席できなくなった可能性があります。

 さらにIOCのバッハ会長はドイツ人。ドイツはナチス・ドイツの所業に厳しい態度をとっていますから、開会式に出たら致命的。IOC会長が出席しないという前代未聞の事態になりかねなかったのです。

「過去のお笑いのネタではないか」と軽く考える人もいるようですが、これは国際的には大問題。日本がいかに人権問題に鈍感かを示す結果になったのです。

 その点で言えば、この問題が発覚した当日、オリンピック組織委員会の橋本聖子会長は記者会見したときに「これは外交上の問題もあると思っている。早急に対応しないといけないと、解任の運びとなった」と説明していました。「外交上の問題もある」? ユダヤ人揶揄をめぐっては国際問題になるということを言いたかったのでしょうが、これは「外交上の問題」ではありません。人道上の問題なのです。

 私は大学の講義やテレビ番組の解説で「ホロコースト」(ユダヤ人虐殺)を何度も取り上げてきましたが、お笑いのネタにする人がいたり、それが長年見過ごされてきたりしたことに衝撃を受けています。これまで自分は何を語ってきたのかと反省しきりです。

 そこで今回は、「ユダヤ人はなぜ差別されてきたのか?」をテーマとして取り上げます。世界の常識を確認しておきましょう。

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source : 週刊文春 2021年8月26日号

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