なぜあの伊藤穰一だったのか「デジタル監」迷走の舞台裏

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「週刊文春」編集部
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「然るべき処分をするよう事務方に調整させている」

 平井卓也デジタル改革相(63)が8月20日の記者会見で釈明したのは、東京五輪パラリンピック向けアプリの発注経緯をめぐる調査報告書のこと。9月発足のデジタル庁の母体となる内閣官房IT総合戦略室の幹部が発注を急ぐため、親しい民間事業者を内部のメンバーに引き入れたことなどが問題視され、「不適切」と断じられた。

 平井氏を悩ませるのはこの問題だけではない。8月5日に各社は、デジタル庁の事務方トップである「デジタル監」に米マサチューセッツ工科大メディアラボの元所長、伊藤穰一氏を起用する方向で最終調整していると報道していた。だが2週間後の18日に一転、見送りと報じられた。菅義偉首相の肝入りで9月1日に発足する新組織は、いきなりトップ不在の見通しだ。

 理由は伊藤氏の過去。少女への性的虐待などの罪で起訴され自殺した米実業家エプスタインから過去に巨額の資金提供を受けていた問題でラボの所長を辞任したことが蒸し返された。

 だが実はこの人事、迷走に次ぐ迷走だったという。最初に打診を受けたのは「日本のインターネットの父」と呼ばれる慶応大教授の村井純・内閣官房参与。固辞され、次に浮上したのがDeNAの南場智子会長。だが6月から経団連副会長も務めている同氏ができるわけもなく、伊藤氏が候補に。平井氏は事前に杉田和博官房副長官に相談し、過去も含めて了承を得て8月4日午後1時半、菅首相に伝えた。首相は、「こちらで引き取る」と応じたという。ところが翌日午前にテレ朝がスクープ。各社一斉に後追いし、既成事実化した。

「IT室からのリークと感じて首相の態度が硬化したようです。自分が人事権者という意識が強い首相は、事前に漏れた人事は潰そうとすることがある。今回は過去の問題に加え、このことも撤回を招いた一因でしょう」(政治部デスク)

 平井氏は会見で伊藤氏の起用見送りを問われ、「デジタル監は総理の申し出で閣議決定する。私の立場で答えるのは非常に難しい」と迷走の顛末を首相に押し付けるように発言。

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source : 週刊文春 2021年9月2日号

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