「手遅れにならないと、病院に連れて行ってもらえないんですか! こんなに苦しいのに診てくれないって、死ねってことなんですね」
首都圏で勤務する救急隊員・Aさんは、40代の自宅療養者にこう罵声を浴びせられた。保健所の判断を2時間も待った挙句、「不搬送」と告げられた患者の目は潤んでいる。Aさんはただ、「申し訳ありません」と伝えるしかなかった――。
全国のコロナ療養者数は20万人を超え、自宅療養者数も約13万5000人と、最多を記録した(9月1日)。
容体が急変しても搬送出来ない事案も増加の一途。消防庁によると、現場滞在時間が30分以上で、かつ医療機関に4回以上照会した上で搬送した全国の「搬送困難事案」は、約3150件に上る(8月23日~29日)。東京都だけでその5割以上を占めており(約1700件)、冒頭の自宅療養者のように「不搬送」になったケースは、8月半ばのピーク時の1週間で約1400件を数えた。
関西圏の救急隊員・Bさんは「現場では命の選別が行われています」と明かす。
重症度の目安となる血中酸素飽和度は、93%以下で「中等症Ⅱ」だ。しかしBさんの地域では、80%台まで下がって、ようやく搬送が決まる状態だという。
「普通の人がずっと息を止め続け『もう無理や』『限界や』と思うくらい息苦しい状態でも90%です。その限界の先にならないと、すぐに運べないんです」(同前)
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source : 週刊文春 2021年9月16日号