自民党竹下派(平成研究会)を率いる竹下亘・元総務会長が9月17日、74歳で亡くなった。総裁選告示日だったが、同派は事実上の自主投票を決定済み。竹下氏は一昨年に食道がんを公表、今期限りでの引退を宣言し、闘病していた。
「亘氏は2000年に初当選。領袖としては当選回数が少ない(7回)が、二つの理由で、すわりが良かった」(政治部記者)
一つは20歳以上離れた異母兄、竹下登元首相の威光だ。亘氏はNHKの記者だったが、登氏が1985年、田中角栄元首相に反旗を翻す形で創政会を立ち上げると兄の秘書に。兄は87年に新派閥・経世会を作り、直後に総理になった。
平成研の源流はその経世会。登氏の元秘書で「参院のドン」と言われた青木幹雄元党参院議員会長は、竹下氏を早く領袖にして、栄華を誇った竹下派の名称を復活させたかった。青木氏は18年、領袖にとどまり続ける額賀福志郎元財務相を退任に追い込み、竹下家への「大政奉還」となった。
もう一つの理由は、竹下氏の人徳だ。「洒脱で敵を作らない性格で多くの人に愛された」(自民党関係者)。兄が可愛がった小渕恵三元首相の次女、優子氏が財務副大臣に就任した12年末、「小渕優子を守る会」という非公式の議連を結成。「俺を議連の幹事長にしてくれ」と申し出た麻生太郎財務相に「それは駄目。小渕を麻生さんから守る会だからね」と返し、麻生氏は大笑いしたという。
13年5月、高市早苗政調会長(当時)が「侵略という文言を入れているのはしっくりきていない」と村山談話を批判し、与党からも反発が出た際のこと。竹下氏は、高市氏も出席する党の会合で「政権への評価が高い。閣僚の舌禍がなければ、7月の参院選は勝てる」と発言。参加した党幹部は「『閣僚』と一般論にすり替えて、高市氏への直言を避けつつ暗に苦言を呈したんだ。上手いもんだなあ」と感嘆した。
そんな竹下氏だが、「地盤の後継は高見康裕・島根県議に決めたが、派閥の跡目を生前に決めきれなかったのは痛い」(政治部デスク)。会長代行の茂木敏充外相が本命だが、人徳に乏しい。対抗馬の加藤勝信官房長官をトップに据えれば、当選回数が3回も上の茂木氏のメンツが潰れる。青木氏の長男、一彦参院議員は9月18日、緊急記者会見を開き、亡くなる前日に竹下氏と電話で話したことを明かして「(派閥のことも)話した。ある程度の思いは感じたが、ここでは言えない。みんなで団結してやって欲しいということだ」と語った。同派伝統の「一致結束箱弁当」が続くかどうか、一つの節目を迎えている。
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source : 週刊文春 2021年9月30日号