「イノベーション」と「インベンション」は違う

三木谷浩史「未来」 第13回 

三木谷 浩史
ビジネス 社会 経済 企業 テクノロジー

(みきたにひろし 1965年神戸市生まれ。88年に一橋大学卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。退職後、97年にエム・ディー・エム(現・楽天グループ)を設立し、楽天市場を開設。現在はEコマースと金融を柱に、通信や医療など幅広く事業を展開している。)

 社会やビジネスにおける「未来」を語る際、繰り返し登場する概念に「イノベーション(技術革新)」がある。「イノベーション」という言葉を聞く時、読者の皆さんはどのようなイメージを頭に思い浮かべるだろうか。iPS細胞や光免疫療法のような新しい医療技術、ブロックチェーンのような新しいアルゴリズム、あるいは、LEDや量子コンピューターのようなテクノロジー……。

 実はこうした「これまでになかった発明」は、「イノベーション」ではない。ノーベル賞を受賞するような発明は、あくまで「インベンション(発明や発見)」。この両者を履き違えて理解している人は、経営者や政治家、官僚にも結構多いのだ。

 では、僕らの「未来」を作っていく「イノベーション」とは何か。それは「新しいもの同士を結合させる発想」に他ならない。

 例えば、我々の生活を大きく変えたiPhone。あれも、音楽と電話、インターネットという既存の技術の組み合わせという「イノベーション」によって、誕生した商品だった。ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクだって、決してファンダメンタルな新技術を発明したわけではない。「オンラインで書店のように本を売ろう」という発想からアマゾンは生まれ、「モーターと電池と車を組み合わせたらこうなるよね」という発想からテスラが作られた。

 楽天グループのビジネスも同じだ。僕らの強みは楽天会員のデータベースを中心に、ECや金融、様々なコミュニティやサービスを一つのエコシステムとして展開しているところにある。エコシステムの本質は「つなげる」ということ。こうして「新しいもの」を結合させていくのが、アントレプレナーの社会的な役割でもあるという思いが僕にはある。

シュンペーターの理論

経済学者のジョセフ・シュンペーター

 この「イノベーション」という概念を理解する上で、経済学者のジョセフ・シュンペーターの存在は知っておいて損はないだろう。

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source : 週刊文春 2021年9月30日号

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