バブルは、はじけて初めてバブルとわかる。こう言われているのですが、中国のマンションブームは、日本から見れば、バブルであることは明白でした。それが遂に白日の下にさらされることになったのです。深圳に本社のある巨大不動産会社「中国恒大集団(グループ)」が経営破綻の危機に直面しているからです。「恒大」という名称でも大学ではありません。「恒(つね)に大きくなろう」という意味が込められています。その名の通り、大きくなろうという野心が強すぎて挫折してしまったようです。

 この巨大企業は、2016年には売上高で世界最大の不動産企業に上り詰めたこともあります。現在も不動産販売面積で中国2位。去年の売上高は日本円で約8兆5000億円にも上っています。電気自動車の販売も始め、強豪サッカークラブ「広州恒大」(現広州FC)も所有しています。全従業員は20万人に上ります。

 この企業は、貧しい農村出身者が一代で築いたというチャイナ・ドリームの典型です。立志伝中の人物、それが許家印・元会長です。中国富豪者ランキングで5位です。

 許氏は1958年に中国東部の河南省の農村で生まれました。母親は許氏が1歳の誕生日を迎える前に亡くなり、主に祖母に育てられたと伝えられています。

 若い頃はセメント工場で働いたこともありますが、1970年代後半に武漢鋼鉄学院(現在の武漢科技大学)に入学。卒業後、勤めていた貿易会社で不動産事業の立ち上げに従事。そこで得た知識を生かして1996年に中国恒大を創業しました。当初は低価格の小型マンションの建設・販売で頭角を現します。

 そこにやってきたのが中国の不動産ブーム。高度経済成長で小金持ちが増え、マイホームの夢を実現しようという人が増えました。

 中国の土地はすべて国有または農民の集団所有地。売買できるのは土地の使用権だけですが、マイホームブームで価格は急上昇。その土地の上に建つマンションの価格も上がります。「土地価格が値下がりすることはない」という「土地神話」も生まれます。

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source : 週刊文春 2021年10月7日号