牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズHDは「牛めし」を9月28日から値上げすると発表。並盛りは320円から380円に引き上げ、主に首都圏で提供してきた「プレミアム牛めし」は終了する。
主因は原材料の輸入牛肉の大幅な価格上昇だ。農畜産業振興機構によると、最新(8月)の米産牛肉の卸売価格は、1キロあたり冷凍バラ肉で1113円と前年同月比で83%高。コロナ禍からいち早く回復した中国が牛肉を“爆買い”しているためで、その波が牛丼業界にも及んでいる。これまで他社に比べ、価格を安く抑えてきた松屋だったが、背に腹は代えられないというわけだ。
直近の第14半期決算で見ても、売上高こそ前年同期比6.6%増の225億円だったが、営業利益は8億円の赤字。苦しい状況は、業界第2位の吉野家HDも変わらない。売上高は前年同期比8.1%減の360億円、営業利益も2億円の赤字となった。
「そうした中で一人勝ちなのが、『すき家』を展開するゼンショーHDです。第14半期決算でも、売上高は前年同期比18.9%増の1526億円。営業利益は28億円の黒字でした」(銀行関係者)
特に顕著なのが、既存店の「客数」。今年4月~8月の累計で見た場合、松屋は前年比96.4%、吉野家が93.6%なのに対し、すき家は107.6%と逆に増えているのだ。同じ牛丼チェーンでなぜ、これほどの差が生まれるのか。
業界に詳しい大手信用調査会社幹部が解説する。
「松屋と吉野家は、サラリーマン層などをターゲットにこれまで主に繁華街への出店に注力してきました。しかしコロナ禍で在宅ワークが進んだことで、客足にブレーキがかかってしまった。一方、すき家はファミリー層も意識して、ドライブスルーを備えた郊外型店舗の出店も増やしてきました。回転率を重視する牛丼業界では効率面で不利とされてきましたが、最近は“密”を避けたい消費者が車で郊外型店舗に行くケースも多い。こうした戦略の差が、コロナ禍で明暗を分けたと言えるでしょう」
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source : 週刊文春 2021年10月7日号