総裁選を見て冷めた気持ちになった|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第15回 

三木谷 浩史
ビジネス 社会 政治 経済 国際 テクノロジー

(みきたにひろし 1965年神戸市生まれ。88年に一橋大学卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。退職後、97年にエム・ディー・エム(現・楽天グループ)を設立し、楽天市場を開設。現在はEコマースと金融を柱に、通信や医療など幅広く事業を展開している。)

 9月29日に投開票が行われた自民党総裁選。決選投票の結果、岸田文雄新総裁が誕生し、次の首相に就くことが決まった。4人の候補者の戦いは派閥や衆院選など様々な思惑が絡まり合い、メディアでも連日その様子が伝えられていた。ただ僕はそうした報道を見ているうちに、日に日にどこか冷めた気持ちになっていった、というのが正直なところだ。

 なぜかといえば――これは今回に限った話ではないけれど――そこで交わされていた議論が「日本の次のリーダー」を決めるに相応しいものだったとは、どうしても感じられなかったからだ。

 何より4人の議論を聞きながら強く思ったのは、その内容がいかにも予定調和的、事なかれ主義的だということだった。原発政策や年金、社会保障、財政の課題……。一つ一つの問題は確かに大切だ。

 でも、国の次のリーダーを決める際は、そうした個別の政策だけではなく、それぞれが「この国の未来のあり方」を示すグランドデザインを掲げ、大いに語り合うべきではなかっただろうか。国民の議論を呼び起こすような本質的なテーマを、もっと大胆に話し合ってほしかった。

 例えば、エネルギー問題。資源のない日本という国で、電力コストが高いままではそのうちに立ち行かなくなるのは間違いない。では、次世代に向け、どのような電力のポートフォリオを組むべきなのか。さらには世界的な重要課題である地球温暖化を防ぐために、CO2排出量をどこまで具体的に減らすのか。

首相公選制の導入も

 だけど、脱原発をはじめエネルギー問題について以前はかなり突っ込んだ発言をしていた河野太郎さんでさえ、総裁選では自身の意見をある程度封印していた。一部の声の大きな人たちの反対を気にするあまり、それぞれが予定調和的な政策ばかりを掲げるようになり、次第に違いを出せなくなっていく――。

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source : 週刊文春 2021年10月14日号

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