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収入1000億、結婚3回 さいとう・たかをはゴルゴを超えた!?

「週刊文春」編集部
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 単行本既刊202巻。コロナ禍の影響で連載を休止するまで、50年以上一度も休載なし――。

 国民的漫画『ゴルゴ13』。その生みの親、さいとう・たかをが9月24日に亡くなった。享年84。

 

 出自や国籍は謎。銃を扱う右手では決して握手せず、1回あたり数十万ドルの報酬で、依頼人のオーダーに完璧に応える狙撃手ゴルゴ。一たび裏切りがあれば、容赦ない制裁を加える。

 作中で言及されたゴルゴの資産は2兆円という天文学的数字。だが、さいとうの生み出した“ゴルゴ・マネー”も、漫画家という枠を遥かに超えている。

 マネジメントを担当する兄と共にプロダクション、そして出版社を作り、異例の「単行本は自社から出版する」という形を実現した。ゴルゴの累計発行部数は3億部超。出版社にもたらした収入は、一般的な見積りで1000億円を突破するのだ。

 しかもゴルゴは終わらない。連載は今後も継続される。その理由を連載誌「ビッグコミック」(小学館)の担当者、夏目毅氏が語る。

「『分業制』で作品を作ってきたからです。約10名いる脚本家と編集者が打ち合わせして脚本を作り、約10名の作画スタッフが漫画に仕上げ、先生が最終的なチェックを行っていました。

 先生は、若い頃から漫画を映画のような完全分業で作ることを意識し、それを実現した作家でした」

 さいとうは“自分は天才ではなく職人である”と口にしていた。それまでの漫画界にはなかった分業スタイルを確立し、ゴルゴの超長期連載を実現したのだ。

 

 大阪に育ち、実家の理髪店で働く傍ら漫画を描いていたさいとう。1958年、21歳の時、意を決して上京する。60年来の交流があった漫画家、山森博之氏(ペンネームは山森ススム・86)が振り返る。

「出版社に原稿を持ち込みに行った時に一緒になったんですが、彼は『どっちがいいですか?』と言って作品を2つ見せてくれた。一つは手塚治虫調の丸いタッチ。そしてもう一つがそれまで見たことがないスマートな、いわゆる劇画のタッチでした。これは敵わない、凄い才能だと思った」

 そしてさいとうは、辰巳ヨシヒロや山森氏らと劇画制作集団「劇画工房」を設立。これ自体は1年程度で休止したが、チームで作品を作る、というさいとうの発想の萌芽は、早い時期に生まれていたといえる。

 女性に対しても百戦錬磨の“凄腕”を見せるゴルゴ。対するさいとうは生涯に三度結婚し、3人の娘をもうけた。山森氏が証言する。

「若い頃から女性遍歴は華やかでした。モテましたね」

 40代で糖尿病を罹患するまでは、一晩でボトルを空けても顔色が変わらない酒豪だった。晩年も校了後には銀座の文壇バーで、編集者相手にウイスキーの水割りを4、5杯呑んだ。

「周囲にいつも気を配り、決して偉ぶったりすることのない、綺麗な呑み方をする人でした」(夏目氏)

 新宿区にある高級マンションと、現妻の出身地、岩手県に建てた別邸を行き来する生活だった晩年。別邸の外壁はピンク色に彩られており、ひときわ目立つ。

 山森氏がさいとうと最後に話したのは2年ほど前だという。

「昔の仲間たちが次々に亡くなって、『とうとう僕ら2人だけになったなあ、寂しいなあ』って言っていました。『ゴルゴも辞めたいと思う時はある。でもスタッフも大勢いるし、もう自分の手を離れてるんだ』と」

 自ら亡き後も稼ぎ続ける男を生み出したという点で、やはりさいとう・たかをはゴルゴ以上の存在だったといえるだろう。

 

source : 週刊文春 2021年10月14日号

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