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異例誓約書と師匠ベタホメの裏に 白鵬の“裏切り”

「週刊文春」編集部
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「やっぱり宮城野親方、師匠が私を……、声かけてくれたおかげで今があると思うんで、この場を借りて、師匠に感謝しております」

 10月1日に行われた引退会見。元横綱の白鵬は10回以上も師匠の存在を引き合いに出し、20年余の土俵人生を振り返った。そんな優等生発言の裏には――。

2017年九州場所での万歳三唱は物議を醸した

 前日の9月30日。日本相撲協会に呼び出された白鵬は、屈辱を耐え忍んでいた。年寄株「間垣」の襲名にあたって、理事会の面々から、前例なき誓約書を突き付けられたのだ。

「要は諸先輩親方の言うことを聞き、相撲界のしきたり、ルールをしっかり守れという当たり前の内容。白鵬はそれだけ信用されていなかった」(協会関係者)

 異例となる誓約書の背景にあったのが、白鵬の“裏切り”だった。

 年寄株の取得と襲名に際しては、年寄資格審査委員会で継承者の資質が協議される。切望した「一代年寄」が事実上の廃止となり、白鵬が空き株の間垣を取得したのは、今年5月。

「この時、白鵬のこれまでの粗暴な取り口や不遜な言動が問題視され、審査委で取得に反対意見が出た。白鵬と宮城野親方が反省を示したため、改心を信じて取得が認められた」(同前)

 ところが――。結果的に最後の場所となった7月場所、白鵬はまたしても品格を問われる張り手やエルボーまがいのかちあげを繰り返した。挙句、優勝を決めた千秋楽の土俵では、ガッツポーズで咆哮したのだ。

最後の優勝を決めてガッツボーズ

「結局、どれだけ注意しても態度を悔い改めなかったということ。審査委では『10年間は部屋付き親方として学ぶべき』と強烈な物言いも飛び出した。白鵬は大人しく誓約書に署名したが、今後、逸脱したと見なされた場合は改めて資質を審査される可能性も。白鵬が協会内で好き勝手できないよう、楔が打ち込まれたわけです」(別の関係者)

 引退会見の場面に戻ろう。白鵬は神妙な面持ちだった。相撲担当記者の話。

「白鵬嫌いの芝田山広報部長(元横綱・大乃国)が会見を仕切る中、失言するまいと、慎重に言葉を選んでいるように見えました。本心かどうかはともかく、横審から批判された取り口も反省すると言い、今後は宮城野親方のような指導者になりたいと。あんなに師匠を持ち上げる姿は今まで見たことがなかった」

 番付を極めた白鵬は、前頭止まりの元竹葉山こと宮城野親方を軽視。目標や感謝の対象として名前を挙げてきたのは、大鵬ら往年の大横綱ばかりだった。

 ただ、会見で師匠をベタホメしたのは、誓約書が効いたからだけではなかったのだろう。受け入れ先がなく、モンゴルに帰国寸前だった痩躯の少年を、宮城野親方が拾い上げたところから、白鵬の力士人生は始まっている。

 他一門の親方が明かす。

「白鵬が残した功績は立派ですが、あれだけ懲戒処分を受けた横綱もいない。師弟関係が機能していたとは言い難いけど、白鵬が問題を起こす度、黙って頭を下げてきたのも宮城野さん。引退発表前の秋場所中も、雲行きが怪しい白鵬の間垣襲名を認めてくれるよう、審査委員会の親方に頼み込んでいたみたいですよ」

 現役時代から石浦や炎鵬ら内弟子を取り、いずれ日本橋に自分の部屋を開く計画を持つ白鵬。だが、新米親方には本場所の場内警備など裏方仕事が待っている。

苦言を呈し続けた八角理事長

source : 週刊文春 2021年10月14日号

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