人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
中学1年からしばらく映画ノートを付けていた。
それは大学ノートに観た映画の半券や新聞広告を貼り、感想を書くというもの。これも誰かに見せる前提(見せ前)で行っていたのだが、ある映画を境に全くペンが振るわなくなった。
“1970年10月〇日
今日は朝から学校の行事があって昼までで終ったので『ひまわり』を観に出かけた。日曜日じゃないのに映画館に行ったのは初めて。友達の高木を誘ったけど、しんきくさそうな映画なのでやめとくわと言われ結局、1人で観たのだが、とても感動した。ヘンリー・マンシーニのサントラ盤(シングルだけど)買って帰ったほどである。
戦争によって引き裂かれた夫婦の愛。ちなみに妻役はソフィア・ローレン。夫はマルチェロ・マストロヤンニだ。オープニングに出てくるひまわり畑には戦争のとても悲しい思い出がある。いろいろあってラストは駅での別れのシーン。僕は必死で涙をこらえてた。
そして、本当に戦争はあってはならないと思った”
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source : 週刊文春 2021年10月21日号