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SBIの新生銀行買収劇にも「大ディールに必ず現れる女」

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森岡 英樹
ニュース 社会 経済

「大きなディールには必ず彼女の名前が出ますね。今度はSBIでも――」

 メガバンク幹部がこう指摘するのは、今年6月29日に日本銀行の政策委員会審議委員を退任したばかりの政井貴子氏(56)だ。

「政井氏は88年に実践女子大文学部を卒業後、名門外資銀行を渡り歩き、07年に新生銀行のキャピタルマーケッツ部部長に転じました」(大手証券幹部)

 政井氏が当時、関与していたと見られるのが、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が提案した私的損失の付け替え疑惑である。

「ゴーンは新生銀行で資産の一部を運用していました。ところが、デリバティブ取引で約17億円の損失が発生。これを日産に肩代わりさせようとしたのです。外国為替の専門家だった政井氏は直接、ゴーンとやり取りしていました。ただ、会社法に抵触する可能性もあり、付け替えは実行されなかった。政井氏は『個別取引の回答を差し控える』としていました」(同前)

 13年に新生銀行の執行役員に昇進した政井氏。16年に日銀の審議委員に就任したが、「広く金融政策には精通していなかった」(同前)との評が専らだ。

「退任直前の6月中旬、最後の金融政策決定会合を『棄権』したことも物議を醸しました。複数の民間企業の社外取締役就任が内定しており、金融政策に関する中立性を重視したといいます。ただ、再就職先探しは委員退任後に行うのが、常識です。なぜなら、審議委員は国会同意人事であり、その1票は重い。安易に議決を棄権して良いものではありません」(日銀関係者)

 その政井氏が審議委員退任翌日の6月30日付で就任したのが、「SBI金融経済研究所」の取締役だった。調査・研究・政策提言等を行うSBIホールディングスの連結子会社だ。

 なぜ政井氏がSBIグループに再就職したのか。

「SBIを率いる北尾吉孝社長には1つの思惑があったと囁かれています。第四のメガバンク構想を掲げるSBIは昨年12月、新生銀行の筆頭株主に躍り出ました。ところが新生銀行の工藤英之社長とは対立関係が続き、買収計画はなかなか進展しなかった。そこで、新生銀行の元幹部で、工藤氏とも親しい関係にある政井氏に白羽の矢を立てたと見られているのです」(前出・メガバンク幹部)

 ただ、政井氏がSBIグループ入りして以降も膠着状態が続き、SBIは9月上旬、新生銀行へのTOBに踏み切った。一方、新生銀行は買収防衛策の発動も視野に入れている。

 泥沼化していく両社の関係。政井氏の“橋渡し”はあるのか注目される。

source : 週刊文春 2021年10月21日号

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