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コロナ第六波は本当に来るのか 《分岐点は11月上旬》《2カ月周期?海外に学ぶリスク》《ワクチン効果減少で高齢者はどれだけ危ない?》

「週刊文春」編集部

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 夏の感染爆発が嘘のように、新型コロナの感染者は日に日に減少している。10月11日、東京都の新規感染者数は49人。実に1年4カ月ぶりに、50人を下回った。もはやコロナは収束したのか――。

 第五波真っ只中の8月20日、全国の新規感染者は2万5876人と過去最多を記録。都内の一日の感染者数は5000人を優に超えた。9月上旬には自宅療養者が13万人を超え、医療崩壊を起こした。

 ここまで急激に感染者が減った理由の一つが、夜間の滞留人口の減少だ。

 都のモニタリング会議は「お盆の時期前後から深夜の繁華街に滞留している人の割合が減った」と報告。東京都医学総合研究所のデータでは、ワクチン未接種者など、感染リスクの高い人の夜間滞留人口が、4月の3回目の緊急事態宣言時と比べても、23.1%も減少したという。

 もう一つの理由がワクチンである。第五波は接種をしていない若者の感染者が中心だった。東京の8月の新規感染者は20~30代が5割を超えていたが、ワクチン接種の進んでいた60代以上の感染者はわずか6%だ。杏林大学呼吸器内科・皿谷健准教授が語る。

「第五波は家庭内感染や近い友人からの感染が主流でしたが、当院でワクチンを2回打った高齢者の入院はなかった。ワクチンの発症抑制効果や、重症化抑制効果が有効だったのは明らか」

皿谷氏

 日本のワクチン接種率は64.3%(10月10日時点)。11月上旬には希望者への接種を完了する見込みだ。

 このまま第六波は来ないのでは?

「いえ、この冬、感染者はまた増えるでしょう」

 そう語るのは、公立陶生病院感染症内科主任部長の武藤義和医師。

「波と波の間の“凪”の時期は3~4週間程度と考えられます。第四波から第五波の間隔もそう。6月20日に緊急事態宣言を解除し、約3週間後の7月12日に再び、緊急事態宣言を発出しました」(同前)

〈不思議なサイクル〉

 では次の波が来る“分岐点”はいつ頃なのか。

「緊急事態宣言が期限を迎えた10月1日から1カ月経った11月上旬頃が、感染者が徐々に増え始める入り口です」(同前)

 その後、波は6~8週間で徐々に増え、同じ期間をかけて減っていくという。11月には文化の日など祝日があり、人との接触機会の増加も懸念される。

「11月上旬に感染者が増え始めた場合、東京で1日の感染者が500人を超えないうちに厳しい感染対策を取らないと、12月末まで第六波の感染者が増え続ける可能性がある。もちろん迅速に対策が出来れば、早めに収束する」(同前)

武藤氏

 欧米でも同じような間隔で感染者が増減している。

〈不思議なサイクル〉――。米『ニューヨーク・タイムズ』紙は10月4日、感染者が約2カ月間で拡大・後退を繰り返していることをこう表現した。そして「このサイクルは、イギリス、フランス、スペインなどでも見られ、デルタ型は1カ月半から2カ月半の間で急増する」と指摘している。

 ジョンズ・ホプキンス大学のエイミッシュ・アダリャ上席研究員も、「原因については分かっていないのですが、この2カ月間での不思議な増減は、様々な地域で同様の傾向が見られているのです」と語る。

 日本に先んじてワクチン接種が進んだ欧米で、再び感染が拡大した背景には、行動制限の緩和もある。

 アメリカは感染者が減った6月、カリフォルニア州やニューヨーク州でマスク着用義務などを撤廃。多くの州で、オフィスの再開など、制限が解除された。

 その結果、7月には既に感染者数は前の波と同レベルに達し、8月上旬には一日あたりの新規感染者数が25万人を超えた。一日の死者数も1000人超となった。

 イスラエルも5、6月には感染者数・死者数ともにゼロに近くなり、屋内でのマスク着用義務を撤廃するなど行動規制をほぼ解除。すると7月には増加傾向となり、8月には新規感染者数が一日あたり1万人を突破してしまった。

 どうやら各国の状況を見ると、ワクチン接種が進んでも、日本に第六波が訪れるのは避けられそうもない。

 加えて懸念されるのがワクチンの効果の減少だ。

 英医学誌『ランセット』に掲載された米国のデータによれば、ファイザー社のワクチン効果は、2回目の接種から6カ月後に88%に低下した。一方、モデルナ社の発表によるとモデルナは2回目の接種から6カ月後まで、約93%の予防効果が得られるという。

時間と共にワクチンの効果は減る

 日本国内のワクチン接種回数は約1億6000万回で、大半がファイザーとモデルナ。ファイザーが約1億3400万回で、モデルナが約2500万回。残りがアストラゼネカである。

 東北大学の児玉栄一教授が指摘する。

「50代以下では、効果が持続していますが、先行接種した60代から効果が薄れている。70~90代での効果減少の差はほとんどありません。65歳以上の集団は注意が必要です」

児玉氏

 今年4月から高齢者や基礎疾患を持つ人を対象に、ワクチン接種は始まった。早い人は既に半年が経過しており、徐々に効果が低減していると考えていい。

 2回接種後にコロナへ感染する、ブレークスルー感染も増える傾向にある。

重症化は数年防げる

3回目接種が進むイスラエル

「8月末から9月上旬のイスラエルの新規感染者は、約半分がブレークスルー感染でした。また接種から時間が経っているほど、感染しやすい」(厚労省担当記者)

 ただ、時間が経っても重症化を防ぐ効果はある。ワクチンで獲得できる免疫には、液性免疫と細胞性免疫があり、液性免疫は抗体がウイルスの侵入をブロックして感染を防ぐ。細胞性免疫は、リンパ球が感染した細胞ごとウイルスを破壊するのだ。

「抗体価が落ちるのは液性免疫の効果が下がるからです。一方、重症化を防ぐ細胞性免疫は数年持つはずです」(児玉氏)

 それでも、重症化する高齢者の割合はやはり高い。アメリカでは、ワクチン接種を完了した人で、新型コロナによって入院または死亡した約1万3000例(8月末時点)のうち、入院の70%、死亡者の87%が高齢者だった。

 日本でも同様の傾向がある。国立国際医療研究センターが9月29日に発表した研究によれば、7月1日以降に入院した3417例のうち、ワクチン接種を2回完了した人は54人。そのうち、65歳以上は44人と8割以上を占めた。基礎疾患を持つ人も46人いた。

 そこで各国が進めているのが3回目のブースター接種だ。イスラエル、アメリカは9月から既にスタート。両国とも現在、感染者数は減少傾向にある。

「イスラエルでは接種後12日以降で、2回目接種者より感染・重症化予防効果が10倍以上になった研究結果もある」(前出・記者)

 日本は早ければ、12月中にも医療従事者から3回目の接種を開始する予定。高齢者の接種は来年以降になる可能性が高く、第六波には間に合わない。児玉氏はこう警鐘を鳴らす。

「感染症であるコロナは寒い季節に増える傾向にあります。宣言解除以降、夜間の人出も増えており、感染再拡大の可能性は十分ある。特に高齢者の方は気を緩めず、感染対策を徹底し続けて頂きたい」

宣言解除後の浅草は人出が増加

source : 週刊文春 2021年10月21日号

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